政府からの緊急要請を受け、太平洋上の現場へと急行する心理学者のノーマン。
そこには旧知の数学者や生化学者も集められ、プロジェクトチームが編成されていた。
軍によれば300年ほど前に海底に沈んだ、異星人のものと思われる宇宙船を発見したというのである。
早速調査が進められるが、この宇宙船は実は未来のアメリカ製であり、何らかの力で過去へ飛ばされてきたものだということが判明する。
そして内部には金色に輝く不思議な球体ーースフィアが据えられていた。
マイクル・クライトンの小説
『スフィア/球体』をバリー・レヴィンソン監督が映画化。
出演はダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・コヨーテ、リーヴ・シュレイバーら。
奇しくも日本では同日に、同じホフマン主演、レヴィンソン監督の
『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』が公開され、ハシゴして見た記憶がある。
原作小説がベストセラーになった直後に『ザ・デプス』『リバイアサン』『アビス』らが立て続けに製作・公開され、”深海映画ブーム”と騒がれたが、大本命のこの作品が映画化されたのはそれから10年近く経ってから。
旬を逃した出し遅れの証文といったところで、ヒットには結びつかなかった。
異星文明とのファーストコンタクト物ではあるが異星人は姿を見せず、海底基地というある種の密室に置かれた人々の心理ドラマが中心となる。
つまるところスフィアは人間の潜在意識の中にある恐怖を読み取り、実体化させる能力を持った存在で、一人また一人と犠牲者が出る中で互いに疑心暗鬼になっていく。
また宇宙船が未来から来たにも、関わらずスフィアの記録が残されていなかった(伝わっていなかった)ということは、要するに自分たちは情報を伝えられない=全員死ぬのだという強迫観念にもとらわれていく。
文庫本で2冊分の物語を2時間強でまとめているので改変されている部分や映画的な省略も多いが、大筋は原作通り。
ただそれでも全体的に間延びした部分も多く、評判が芳しくなかったのも頷ける話だ。
それでも映画館では楽しんだし、20年近く経って見直しても(忘れてる部分も多かったこともあるが)それなりには楽しめた。
この時期はクライトン作品がこぞって映画化されたが、実は情報量が多いので映画向きではないのだろう。