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『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999)

まずは「しねま宝島」からの転載――

『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999)_e0033570_20095267.jpgはじめにお断りしておきます。私は「となりの山田くん」の大ファンです。
「朝日新聞」の連載も読んでますし、単行本も全部揃えています。
元々いしいひさいちファンでもなんでもなかったのですが、この作品と出会ってから少しずつ読むようになりました。

そんな「山田くん」がなんとスタジオ・ジブリでアニメ映画化!と聞いたときは正直唖然としました。
天下の「朝日」に連載とはいえ、「山田くん」がメジャーで通用するのか? 
それにジブリと「山田くん」? どーにも結びつきません。
ジブリといえば「ナウシカ」「トトロ」に「もののけ姫」でしょ?

また、ジブリといえば徳間書店に日本テレビ。
と、くりゃバックにいるのは「読売新聞」! 
「朝日」と「読売」がこんなとこで繋がるとは……クラクラしてきました。

更にそれに輪をかけたのがウォルト・ディズニー社の参戦! 
あの大「ディズニー」が「山田くん」!? 
全米で「山田くん」公開?! 
うわーっ、やめてくれぇ!

あ、いや、なにも「山田くん」のアニメ化そのものを否定する気はありません。
例えば、深夜枠で帯番組…ふんふん、これなら落ち着いて見てられます。
こじんまりと公開する映画、これでも納得です。
しかししかしの大「ディズニー」! 
日本じゃそのブランドはヒットの「保証」にはならないけれど、それでも全世界に燦然と輝くビッグ・ネーム! 
いくらジブリと提携したからといって「山田くん」に資本提供なんかしなくたっていいのに…。
「山田くん」って、ン十億もかけて全世界マーケットで勝負するような”超大作”なのかー?!

やがて配給が松竹に決まったとのニュースが流れました。
今までジブリ作品は東映か東宝の配給でした。
「もののけ姫」を大ヒットさせた実績のある東宝の社長は、「何か自分たちに落ち度があるのか?」と詰め寄ったとか。
それに対して徳間の社長は、ヒットのない松竹へのプレゼントだ、と発言。
松竹幹部は大感激! 
松竹系列で一番でかい映画館を用意し、またかつてない大規模の劇場での公開を明言したのです。

なにかが違う…。
「内容からして東宝向きじゃあないし、大ヒットするとも思えない。松竹に配給を任せたのは、そのリスクを考えたからだ」とは、そのニュースを知った当時の私のメモ。

「『スター・ウォーズ』に対抗!」とか「配収60億!」とか景気の良い話が聞こえるのも気になりました。どこかで、なにかが、決定的に間違っている……。

そして公開。フタをあけて見ると、関係者の思惑がドンドン外れていきます。
配収は6億程度、とか(60億なんてとてもとても)。
1200人ぐらい入れる劇場に、観客100人足らず。
これは全く予測できなかったことでしょうか? 
それともジブリ・ブランドならどんな映画でも当たると思ったのでしょうか? 
トトロやネコバス、ジジのぬいぐるみを集めるような若い女性が、喜んで「山田くん」グッズを買い漁るとでも……。

余談ですけれども、題名に「ホーホケキョ」なんぞと付いたのも、どーにも気に入りません。
なんでも「高畑監督の作品は『ほ』の字がついてなきゃいかん」と宮崎駿プロデューサーが強く主張、一時はタイトルを「ぽっぽちゃん」にしよう、とまで言ったそうな。
いくらなんでもそれでは全くの別物ですよ。

「太陽の王子ホルスの大冒険」「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」…
確かに高畑作品には「ほ」の字が入ってますけれどね。結局はその「ジンクス」も何の支えにもなりませんでしたが。

ではでは、この映画はつまらないんでしょうか?
私はそうは思いません。ヘンだな、と思う箇所はいくつかあります。

例えば出演者。
ジブリ作品では著名人、有名俳優・タレントを出演させる傾向が強いですが、その成功例はあくまで脇役としてのもの。メインがみんなそれでは、ちと困りものです。
声を聞いた時、画面の向こうにその人の顔が浮かんでくる、というのはアニメにとって決してプラスには作用しません。

また、歌謡曲(流行歌)の挿入も、その時代性を演出するための一つの手段ではありますが、この作品はノスタルジーに浸るタイプの作品でしょうか?時代性を演出する必要のある作品ですか?

或いはCGなど新しい技術を用いての画期的な画面作り…素晴らしいの一語です! 
しかし、観客の中にその凄さに気づく人がどのくらいいるでしょうか?……などなど。

『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999)_e0033570_20101313.jpgそれでも面白いんです。原作に忠実な部分は。
膨らませたり、付け加えたエピソードは完全に浮いちゃってますけど、それでも面白いんです。
映画館にも笑い声が響きます。

でも、その「笑い」は家族揃って、という類のものとはちょっと違うみたいなんですね。
子供は飽きます、泣きます、走り回ります……子供を引きつける派手さはありませんから。
ただ付き添いのお父さんお母さんは思わずうなずいたり、ニヤニヤしたりします…つまりは子供が読まない漫画、大人だけが読む漫画、ようするに新聞連載漫画の面白さなんです。

ですから、やるのならば大人をターゲットにした深夜枠、或いは小さな劇場でゆったりのんびり、これなんです。
最初から、そもそもの始めから、なにかが違っていたんです。

ところで、劇場でこの作品のパンフを購入された方は、裏表紙を見てください。
そこには表の題名以上の大きな字で、こう書かれています。
「トホホケキョ となりの山田くん」と。

――以上が転載部分で、これは公開当時に見たときの感想なんですが、久々に見直してもそのまんまでした。

お話は驚くほど覚えており、如何にそのころ原作漫画を繰り返し繰り返し読んだか、という証明なんですが、一本のアニメ映画としてはどうにもこうにも面白くありません。

ラフに見えて技術的凄い(んだろう)とか、花札とか俳句を取り入れた演出もオシャレといえばオシャレとか、愛すべき作品だとは思うのですがどうも…。

余談ですがこのあと、東映アニメーションの製作で「ののちゃん」というタイトルでTVアニメ化されたんですが、単純に言えばそっちの方が面白かったです。
まあ深みはなかったので、”芸術点”で評価すればこちらの作品に軍配が上がるのでしょうが、ストレートな原作のアニメ化で肩ひじ張らずに気楽に見られるということならば、アニメ版「ののちゃん」の方を推したいですね。

【ひとりごと】
以前友人が指摘してましたけど、この作品は本当に季節感がないですね。
春なら春、秋なら秋のエピソードをまとめ、一年の移り変わりを表現してくれた方が見てる方は混乱しにくいと思いますがね。

そしてテレビ放送される度に高視聴率を稼ぐことで知られるジブリ作品ですが、この作品は確かまだ一回しか放送してなかったはずです。


by odin2099 | 2020-05-06 20:17 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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