『アンドロメダ病原体』 マイクル・クライトン
2020年 07月 13日
そんな中この作品への言及も増えており、気になっていたこともあって読み直し。
面白い。
再読に耐える面白さだ。
ネタの古さは感じず、むしろ今が旬の小説に感じられる。
実際に起こった事件の報告書や関係者への取材をもとに後日構成した、という体裁も良い。どこまで本当でどこからが創作なのかの境界線が曖昧になるからだ。
もちろん全てがフィクションではあるのだが、その理詰めの説得力は
ひょっとしたら?という一抹の不安と期待を抱かせてくれる。
また事件後に書かれたというシチュエーションは、読み進めるうちに例え何が起ころうとも、最終的にはそれを回避できた、いわばハッピーエンドが約束されているという安堵感ももたらしてくれる。
またしばしば「この時はまだわからなかった」「あの時こうしていれば」といった記述が挟まれているのも、何気ない会話や作業が後々どういった影響を与えるのかを推理する楽しみも提供してくれる。
最後に大規模なサスペンスを用意し、なんとなく力技で強引に幕引きを図った感がないではないが、それらをひっくるめて良く出来た”小説”だと思う。
長らくハヤカワ文庫では「SF」のカテゴリで刊行されてきたが、今では「NV」へお引越し。
「SF小説」ではなく純然たる「小説」(エンタテインメント)として読んでほしいという出版社サイドからのメッセージか。
<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/8975061/