『宇宙戦艦ヤマト2総集編』
2020年 07月 29日
「さらば」からじゃ先へお話が続かないからね。
以下、感想を「お茶の間」から転載。
26話分を2時間強でまとめたパート1の劇場版も無謀ではあるが、1時間半でまとめたこれは更に無謀といえよう。
元々ダイジェストという行為そのものが無謀なのではあるが、それでも同様の内容の「ヤマトIII総集編」が、ストレートに切り詰めて構成したのに対してこちらは設定を大幅に変更しており、結果的に単に「さらば」のTVバージョンとのみ表現されがちな「ヤマト2」を、全く別の作品へと昇華させている。
舞台設定は「西暦2201年」と明言せずに「23世紀初頭のある日」とされ、「宇宙の危機に反逆者の汚名をきて旅立つヤマト」という図式がバッサリ切られ単なる定例のパトロール航海中に遭遇した事件として再構成。
ここでテレサのメッセージを受信し白色彗星の接近を知るという展開である。
復活したデスラーとの再三に渡る戦いも大胆に集約し、かえって一本筋が通ったようでもある。
そのあおりを喰って出番をカットされたゴーランドやナスカのようなキャラクターもいるものの、後半部分は前半ほど端折られていないので、ラストに向けてのカタルシスはさほど損なわれていない。
特筆すべきはBGMの使い方で、シリーズでは特に中盤以降に「ディスコ・ヤマト」の無理矢理の挿入によって失われた画面との一体感を取り戻すかのような盛りあがりをみせる。
本来はシリーズへの使用を前提とされながら「ディスコ・ヤマト」にその座を譲った感のあるBGM群と、「新たなる旅立ち」用の新曲を使用するセンスも見事である(ただ、終盤の都市帝国突入の際の「新コスモタイガーのテーマ」流用は、作品のムードを一変させてしまっているが)。
惜しむらくは構成変更に際して、ナレーションを全て新録し、辻褄合わせのセリフの取りなおしまでしておきながら、作画面での新作カットなどの追加が一切なされなかったことであろうか。
そもそもこの作品の製作の経緯が当時から気になってならない。
「ヤマト2」放映終了から半年後、「新たなる旅立ち」放映からも約2ヶ月後というこのタイミングは何を意味するのだろうか。
ストーリーの流れからするならば「新たなる旅立ち」放映前が(受け手としては)望ましいし、また次回作への前宣伝では早過ぎる。新作「ヤマトよ永遠に」公開は、まだ10ヶ月も先なのである。
考えられるのは、翌週からこの枠でスタートした「宇宙空母ブルーノア」絡みというで、この同じ西崎プロデューサーが手掛けた新番組への前夜祭イベントとしての意味合いがあったとも考えられるが、それにしては(番宣スポットは流れたものの)殊更強調した演出はなされていない。
総集編製作の必要性も感じられないために、謎は深まるばかりである。
――ということなのだが、実際のところ「ヤマト2」は好きだし、この総集編も「さらば」なんかよりも好き。