『氷の微笑』
2020年 10月 12日
この映画で描かれている一連の事件は、ニックの恋人でも会った心理学者ベスの仕業ということで一応の解決を見る。
だがラストシーンでの思わせぶりなショットが、真犯人はキャサリンであることを暗示しているし、実際に監督のバーホーヴェンもシャロン・ストーン自身も「犯人はキャサリン」だと語っている。
ただキャサリンが真犯人だとしても何か釈然としない思いが残るのは、その動機や目的がハッキリと見えてこないからだろう。
最初の犠牲者となった元ロックスターのボスは、キャサリンとは恋人同士ではなくただのセックスフレンドという間柄だったが、おそらく嫉妬したロキシーに殺された。
そしてキャサリンの愛を競う新たなライバルであるニックをも殺害しようしたものの、失敗して事故死を遂げる。
ベスは夫殺しの過去を内務監査局のニールセンに知られ、口封じで殺したのだと思う。
ただベスの夫殺し、及び学生時代の恩師殺しにはキャサリンが関与していた可能性も否定できない。
何らかの形でベスとキャサリンの関係(「一度だけ寝たがレズではない」とベスは語っているが)に気づき、それを非難したことがあったのかもしれない。
そしてニックの相棒ガス殺しはヘイゼル。
「ニックを愛していた」と今わの際に語ったベスが全て嘘をついていたとも思えないし、彼女の家の鍵が壊れていることはその前に明らかになっているので、誰かが忍び込んで証拠を捏造するのは容易いのだから。
キャサリンはこれらの殺人事件に、自らの手を染めることなく関与した。
自らに心酔させ、心理的に彼女たちを操り、事件を起こさせる。
手を下した本人からその時の状況を聞き、それをネタに小説をものしていたのである。
だからこそ(自分が殺害してないからこそ)心理テストもパスしたのだ。
ではキャサリンとニックの出会いは、故意だったのか偶然だったのか。
偶然だと考えるにはその後の展開が早すぎるし、用意周到過ぎる。
キャサリンは最後にニックを殺すつもりだったのだろうか。
当初はそのつもりがあったのだろう。
ただキャサリンとニックは似た者同士で、そこに何らかの共感が生まれたのかもしれない。
「自分の愛する人は皆死んでしまう」「あなたを失いたくない」とニックの前で流した涙は、まんざら嘘ではなさそうだ。
ということで、答えは提示されているものの、そこへ至るまでの過程が辿れない。
ちなみにマイケル・ダグラスはキャサリン役にキム・ベイシンガーを希望したものの断られ、次にジュリア・ロバーツ、グレタ・スカッキ、メグ・ライアン、ミシェル・ファイファー、ジーナ・デイヴィス、キャスリーン・ターナー、エレン・バーキン、マリエル・ヘミングウェイ…とオファーするが全て拒否されたという。
またバーホーヴェン監督はデミ・ムーアを希望したらしいが、見てみたかったような、シャロン・ストーンで正解だったような…?
そういや『アントマン&ワスプ』でマイケル・ダグラスとミシェル・ファイファーは夫婦役だったが、この役をシャロン・ストーンが演じるという噂もあったなあ。
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