『ジョーズ3』(1983)
2020年 11月 05日

シリーズの顔・ブロディ署長は姿を見せず、その息子たちが主人公に。
タイトルは”3作目”と”3D映画”のダブルミーニングだ。
今度の舞台はアミティではなく、フロリダにオープンするシーワールドで、ブロディ署長の息子マイクはチーフ・エンジニアとしてここで働いていた。
行方不明になったスタッフを探しに出たマイクたちは、園内で体長3メートルほどのホオジロザメを発見、捕獲に成功する。
マイクの恋人で海洋生物学者のキャスリンの発案で、このサメを殺さずに飼育することになるのだが、館長が性急に見世物にしようとした結果死んでしまう。
その直後、体長10メートルはあろうかという巨大なホオジロザメが出現、捕獲したサメはこの海の怪物の子供だったのだ。
巨大サメによって海中トンネルは破壊され、数十人の観客が海底の施設内に取り残されてしまう。
前2作は凶暴な生物が暴れるという”動物パニック物”だったが、今度のサメは想像を超えた大きさと破壊力を持っているという点で既に”怪獣映画”の域に達している。
その一方で閉鎖された施設内から人々を救出するという展開は、「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」などの”ディザスター物”に近い。
正統派の続編だった「2」の後は、やはり変化球にならざるを得ないのかもしれない。

では主人公は孤軍奮闘かというと、マイクとキャスリンは早い段階から同格に扱われていて、クライマックスでは行動を共にしているからバディ物と呼んでも差し支えないだろう。
これも一種の変化球か。
そしてサメの犠牲者となるのは名もなき人たちだけでなく、観客が感情移入出来るキャラクターの方が盛り上がるが、その役割を担うのが水上スキーのショーに出演しているスキーヤーのケリーという美女。
もっとも遊びに来たマイクの弟ショーンと恋仲になるなど出番は多いものの、フラグを立ててから襲われるので予定調和過ぎて驚きはない。
むしろ子供の頃にサメに襲われた経験から海を怖がってるというショーンの方が、兄との対比で色々なドラマを演じられそうなのだが(例えば海へのトラウマを克服して誰かを助けようとするとか)、その設定が十分に活かされることなく途中でフェードアウトしてしまうのが勿体ない。
今回見るのが3回目かな。
世間一般の(?)低評価よりは愉しんだクチではあるものの、手放しで喜べる作品とはお世辞にも言えない。
3D映画ということで画面の手前に様々なものが飛び出してくるという演出が目立つが、見せ方が直接的すぎる上に合成のマスクがずれてバレバレなので興を削ぐし、お話作りの段階でブロディ一家を無理に絡ませなくても良かったし(主人公が息子である必然性がゼロ)、これで脚本がリチャード・マシスン(カール・ゴッドリーブとの共作)ってホントかしらん?
監督はジョー・アルベス。
出演はデニス・クエイド、ベス・アームストロング、サイモン・マッコーキンデール、ルイス・ゴセット・ジュニア、ジョン・パッチ、リー・トンプソン、P・H・モリアーティ。
音楽担当はアラン・パーカーだが、「サメのテーマ」はもちろんジョン・ウィリアムズのものが使われている。
今見ると「ジョーズ」というより「ジュラシック・パーク」っぽいな。
いや「ジュラシック・ワールド」か。
【ひとこと】
イルカが健気で可愛い。