『カサンドラ・クロス』(1976)
2020年 11月 13日
逃走中に彼らは感染性の強い細菌を浴びてしまい、内一人がジュネーヴ発の大陸横断鉄道に乗り込んでしまう。
米軍は列車内にいる感染者の発見を急ぐと共に、機構内で細菌兵器を開発していたというスキャンダルの発覚と伝染病拡大を阻止するため、密かに乗客ごと列車を処分しようとしていた。

”外”では、バート・ランカスター演じる米国情報部の将校のゲリラ捜索と、最初に感染者と接触したイングリッド・チューリンによる治療法の解明が描かれ、これが軸なのかと思っていると、どうも両者の温度差が噛み合わない。やがて軍の恐るべき陰謀が明らかになっていく。
一方”中”では、高名な医者のリチャード・ハリスと、その元妻で作家であるソフィア・ローレンが中心で痴話喧嘩が始まるのかと思いきや、彼らが自分らが置かれた非常に危険な立場の中で、他の乗客たちを救おうと必死に努力する姿が描かれていく。
最初はゲリラの目的や細菌兵器の正体を究明する、いわゆる犯人捜し的なサスペンス物なのかなと思って見ていたのだが、結局は「大空港」や「ポセイドン・アドベンチャー」、「タワーリング・インフェルノ」などの流れを汲む、閉鎖された空間における群像劇だった。
列車内には一癖も二癖もある連中が乗り込んでいて、身分を偽ってる者や、パニックを起こして他の乗客を危険に陥れようとする者、我が身を犠牲にして他者を救おうとする者など定番のキャラクターも揃っている。
そしてハッピーエンドとは言いかねる後味の悪いラストシーン。
「キングコング」もそうだったが、純粋にスカッとした結末にはならないのは、当時の流行りなのだろうか。
【ひとこと】
今年の初めにクルーズ船内で新型コロナウィルス感染症の集団感染が発生した際には、不謹慎ながらこの映画で描かれたようなシチュエーションを思わず連想してしまった。
言葉巧みに沖合に誘導して、そこでドカン!と。