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『ジャッカル』(1997)

『ジャッカル』(1997)_e0033570_08235062.jpgFBIとMVDの合同捜査チームによって弟を殺されたチェチェン・マフィアのボスが、その報復として”ジャッカル”というコードネームで呼ばれる正体不明で超一流の暗殺者を雇い、アメリカの要人暗殺を計画した。
捜査に行き詰まりを感じたチームは、”ジャッカル”を知る数少ない人物であり、今は服役中の元IRAのスナイパー、デクランを仮釈放させて捜査に協力させようとする。
実はデクランは”ジャッカル”に対し、個人的な恨みを抱いていた。

ブルース・ウィリスとリチャード・ギアが共演し脇をシドニー・ポワチエが固めた、フレデリック・フォーサイスの小説をフレッド・ジンネマンが監督した「ジャッカルの日」のリメイク。
監督はマイケル・ケイトン=ジョーンズ。

ところが完成した作品にフォーサイスの名前はなく、代わりにあるのは
 BASED ON THE MOTION PICTURE SCREENPLAY ”THE DAY OF THE JACKAL” BY Kenneth Ross
つまり、ケネス・ロスの書いた「ジャッカルの日」の脚本に基づいて~という一文。
何やら権利関係等々のゴタゴタを感じさせる。

ゴタゴタといえば当初はブルース・ウィリスとリチャード・ギアの配役が逆だったらしい。
オリジナル版で”ジャッカル”を演じたエドワード・フォックスとルベルを演じたマイケル・ロンズデールのルックスを考えれば、”ジャッカル”がリチャード・ギアでルベルに相当する役がブルース・ウィリスの方が納得いくのだが、結果的にルベルの役回りを二人のキャラクターに分け、片方をシドニー・ポワチエが演じているのでリメイク版なりのオリジナリティは出たことになる。

『ジャッカル』(1997)_e0033570_08240121.jpgしかしこの映画、オリジナル版と比べると色々とおかしい。
変装の名人で凄腕の暗殺者である”ジャッカル”だが、とにかく目立ちたがり屋。
邪魔だとみれば容赦なく人前だろうが発砲するし、デクランを好敵手と認めているのかもしれないが、やたらと痕跡を残してゆく。
彼に追われることをむしろ楽しんでいるようにも見えるし、また殺人をショーとして捉えているフシがある。

一方のデクランも、元IRAの闘士という設定は活かされているとも言えない。
”ジャッカル”との因縁も政治や思想信条絡みではないようだし、普通にFBIなりMVDなりの捜査官でも良さそうだ。
もしかするとオリジナル版からのあまりの改変ぶりに、フォーサイスが自分の名前を出すことを嫌ったためにノンクレジットになったのかもしれない。

ところで宿命のライバルのジャッカルとデクランだが、クライマックスでは遂に直接対決を迎える。
しかし同一画面に二人が映ることはなく、あってもどちらかが後ろ姿や体の一部だ。
カットバック処理で緊迫感を高めようとはしているものの、何か不自然にも映る。
ひょっとするとブルース・ウィリスとリチャード・ギアは、現場では一度も顔を合わせていないのではないだろうか。


by odin2099 | 2020-11-29 08:27 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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