1963年から1973年まで、という区切りは若干中途半端にも感じたのだが、テレビアニメ「鉄腕アトム」がスタートした年から、その「アトム」を製作した虫プロが倒産した年まで、ということで納得。
こちらも手塚治虫に始まり、手塚治虫に終わる。
ということでは、以前続きをまとめて欲しいと記した
「手塚治虫とトキワ荘」の続編的性格の一冊でもある。

虫プロの黎明期の話は色々と読んだり聞いたりして知った気でいたのだが、その殆どが直接の関係者、つまり内部の人間かそれに近い立場のものが多かったことに改めて気づかされた。
第三者的立場で客観的にその経緯を綴ったものは案外少なかったようである。
また虫プロ以外の他社、TCJ、東映動画、Pプロ、東京ムービー、タツノコプロ、スタジオゼロ等々の動向も含め、俯瞰的にとらえた文章も寡聞にして知らない。
黎明期のアニメ制作会社の大半が、映像制作者ではなく漫画家が中心になって設立されていたというのも、言われてみて初めて気づいたことであった。
最後は1974年以降の事柄が、79年頃まで「エピローグ」としてまとめられているが、アニメブームが起こった以降のことは是非とも稿を改めてまとめていただきたい。
「宇宙戦艦ヤマト」の誕生、日本アニメーション設立に至るまでの”闇”、「機動戦士ガンダム」を産み出したサンライズの勃興、「超時空要塞マクロス」「うる星やつら」といった新世代の台頭、そしてスタジオジブリの誕生…。
1974-1984、次の十年間も十分に刺激的なものとなるのは間違いないだろうから。