『メリエスの素晴らしき映画魔術』(2011)
2021年 01月 15日
リュミエール兄弟のシネマトグラフに刺激を受けたメリエスは、自らも映画製作に乗り出し、奇術師出身ならではの多彩なアイディアを盛り込んで人気作を生み出してゆく。
メリエスこそ正しく「特撮映画の父」「SF映画の始祖」と呼ぶに相応しい存在だろう。
やがて彼に影響を受けた同業者が次々と現れ、メリエスは濫作を余儀なくされて質の低下を招き、やがて観客からも飽きられてしまい失意のうちに業界を去るのだ。
映画史に残る人物であることは承知していたが、具体的に何をどうした人なのかということは知らなかったのだが、その栄光と挫折、波乱万丈の人生はベタで陳腐な表現ではあるが、やはりそれだけで”映画的”だと感じた。
また黎明期から映画はカラー表現に挑んでいた。
これまた20世紀の初頭に早くも”カラー映画”という概念があったことに驚きを感じた。
映画はまず音が付き、それから色が付いたという風に理解していたのだが、疑似とはいえこれはこれで立派な”カラー映画”であることは間違いない。
自身の映画史の認識を改めなければなるまい。
映画館での上映の際は先ずカラー版の『月世界旅行』が上映され、続いてそのバックボーンを解き明かすこのドキュメンタリー映画が上映されたようだが、DVDではこちらが先に収録されていて、修復の過程を見せた後でじっくり本編を見せるという構成になっている。
というわけで久々に『月世界旅行』もカラー版で見直したのだが、画面に不釣り合いな音楽は煩く感じたし、肝心のカラー化も奇麗というより派手で毒々しいという印象を受けた。
時代背景を考えれば歴史的意義はあるだろうが、純粋に一本の作品として楽しむならば白黒版の方が想像の余地が残されており、幻想映画としての完成度は高いように思うのだが如何だろうか。