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『超高層のあけぼの』(1969)

日本で最初の超高層ビルである霞が関ビル。
その建設の過程を、企画・設計段階から完成までを二部構成で描いた2時間40分の超大作。

『超高層のあけぼの』(1969)_e0033570_21322132.jpg池部良、木村功、佐久間良子、新珠三千代、丹波哲郎、田村正和、松本幸四郎、平幹二朗、佐野周二、三宅邦子、中村伸郎、伴淳三郎、渡辺文雄、北林谷栄、内田朝雄、菅井一郎、南廣、根上淳、池田駿介、小林昭二といった出演者の顔ぶれからてっきり東宝映画かと思っていたが、実は東映の作品(実製作は霞が関ビルを建設した鹿島建設の子会社)。

またスタッフのクレジットは原作:菊島隆三、脚本:岩佐氏寿・工藤栄一、監督:関川秀雄となっているが、脚本家や監督が次々と交代する事態に陥った為らしい。
それに黒澤明が『トラ・トラ・トラ!』の監督を降板したのに伴い、主演クラスの俳優への出演オファーが錯綜した結果こちらも降板が相次ぎ、結果として東映作品とは思えない布陣になったようだ。

映画そのものは重厚なキャストに伊福部昭メロディが彩を添え、製作段階でのドタバタを感じさせないほどの骨太な作品。
関東大震災時にビクともしなかった上野・寛永寺の五重塔から耐震構造のヒントを得るところから、従来の常識を覆す新しい工程の確立や予算との戦いといった上層部の戦いに、事故や台風の接近や大雪、落雷といった現場レベルでのアクシデントなどを取り混ぜ飽きさせない工夫がなされている。
もっともこれらのイベントは、必ずしも事実に即している訳ではなさそうだが。

とにかくビルの完成から約1年後に映画は公開されているので、周辺に何もなく聳え立つ霞が関ビルは格好良い。
今ではCGなどで加工しなければとても描けない”絵”だ。
また現場で撮影されたと思しき”絵”も時折盛り込まれているが、こちらは同じく鹿島建設が施工した浜松町にある世界貿易センタービルの建築現場で撮影されたものだそうだ。
やはり”本物”には勝てないということか。

【ひとこと】
『帰ってきたウルトラマン』に出演する2年ほど前の池田駿介が出ている(あ、根上淳もだ)。
出番はそれほど多くはないのだが、なかなか精悍で格好良い。

by odin2099 | 2021-01-30 21:34 |  映画感想<タ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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