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『イルミナティ/世界を操る闇の秘密結社』(2019)

イルミナティといえば18世紀に誕生し、弾圧を受けて解散したとされているが、実はその後も密かに存続し、陰から世界の経済・政治・宗教に影響力を及ぼし続けた、というのが一般的なイメージか。
映画にもなったダン・ブラウンのベストセラー「天使と悪魔」にも登場し、フリーメイソンとの関係も取りざたされるなど陰謀論と深く結びつけられた存在だ。

『イルミナティ/世界を操る闇の秘密結社』(2019)_e0033570_19160592.jpgこの映画はそんな知られざるイルミナティの真相に迫るドキュメンタリー映画。
トンデモな映画かと見始めると、歴史学者や研究家のインタビューをふんだんに盛り込み、大真面目に作られた作品だった。

イエズス会の修道士だったインゴルシュタット大学教授アダム・ヴァイスハウプトが、この秘密結社を設立するに至った経緯から始まり、組織が拡大してゆく様やその中で行われる数々の秘儀を紹介し、やがて弾圧もあって内部から崩壊していくまでを丁寧に説明していく。
そしてイルミナティはもう既に存在はしておらず、陰謀論は完全に否定して終わる。

その割にこの邦題は、興味を引くためとはいえ映画本編の主張とは真逆となるので製作者に対する冒涜行為ではないかと思うし、パンフレットに寄せられた記事には、陰謀論を否定どころかむしろ肯定するような内容もあるのは如何なものかと思う。
結局配給元の欲しかった内容の映画ではなかったので、何とかして自分たちの土俵へ上げようとした結果、そのように受け取れるのだが。

そして大多数の観客は(自分も含め)学術的にイルミナティを取り上げた映画ではなく、わかりやすい陰謀論に即したイルミナティの映画が見たかったであろうことは想像に難くない。
このタイトルでこの内容では、詐欺だと言われても致し方なかろう。

【ひとこと】
映画そのものは大変美しく、また興味深い内容だったことは付け加えておこう。


by odin2099 | 2021-02-22 19:18 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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