『約束の宇宙』(2019)
2021年 04月 22日
宇宙へ飛び立つまでの残り日数は少ない。
離婚した夫に娘の世話を任せ、サラは訓練に励むのだった。
初めは気丈に振舞っていたステラだったが、突然の生活環境の変化に戸惑い、遂にはその感情をサラにぶつけてしまう。
宇宙飛行士として、そして一人の母親としてサラが下す決断は――。
自分にとっては妖艶な悪女や魔女のイメージが強いエヴァ・グリーンが、幼い娘を持つ宇宙飛行士という難役に挑んだ作品。
最初はミスキャストではないだろうかと思っていたものの、彼女には”闘う女性”のイメージもあるだけに、意外と言っては失礼なくらいのハマり具合だった。
そして無骨ながらも繊細な面も併せ持つ同僚の船長役をマット・ディロンが好演し、更にステラ役のゼリー・ブーラン・レメルのナチュラルな演技が涙を誘う。
宇宙飛行士の日常という特殊な世界を舞台にしながらもそれを必要以上に強調することもなく、ごくごく当たり前の母娘のドラマに仕立ているのですんなりと作品世界に溶け込むことが出来た。
終盤、ヒロインはある決断を下す。
娘との絆を取り戻すためには必要なのだろうということも理解は出来る。
だがそれは同僚の宇宙飛行士たちをも危険に晒しかねない行為。
”母親”としては正解なのかもしれないが、”宇宙飛行士”としては明らかに失格。
しかもそれが不問のまま(ヒロインの行動を正当化したまま)、いわば”美談”として締めくくる終わり方だけはどうしても得心がいかない。
といって二律背反の苦渋の決断を迫られた彼女の葛藤を描いた結果、規律違反を犯したヒロインが任務を解かれるという結末や、あるいは同僚に全てを話して謝罪し、それが許されて晴れて旅立ちの時を迎えるという終わり方なら納得がいくということではない。
ずっとリアリティを大事にお話を組み立てていたにも関わらず、この大事な局面で安易な道に流れたというか、あまりにもご都合主義的な展開に見えてしまっただけに、画竜点睛を欠いているようで非常に残念に感じたということなのである。
エンドロールは、これまでミッションに就いた”ママさん飛行士”たちが写真付きで紹介されているが、その中にはわが日本の山崎直子飛行士のものもある。
【ひとりごと】
下世話な話だが、あんなお色気ムンムンの美女と一年も宇宙ステーションという隔絶された世界にいたら何かマチガイが起きそうな気がする。