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『アモン・サーガ』(1986)

夢枕獏天野喜孝が組んだコミック『アモン・サーガ』を原作としたヒロイック・ファンタジー。
原作は徳間書店から刊行されているがアニメ制作には加わらず、三菱商事、東北新社、東映ビデオという珍しい座組みで作られた(ただし主題歌やサントラ盤のCDは徳間ジャパンからリリース)。

『アモン・サーガ』(1986)_e0033570_23061475.jpgアモンは母の仇ヴァルヒスを討つべく傭兵募集に託けて敵地へ潜入を試み、ガリウスやアルカンら一癖も二癖もある連中と一緒に採用になる。
そこには黄金の都市の手掛かりを知るリチア姫も囚われていた、というところから転がるストーリー。

ガリウスは最初酒場でアモンに絡んでくるのだが、大騒ぎの後では最後まで”親友”ポジに落ち着き、そのガリウスと共に訳アリ顔で出てくるアルカンは、実はリチア姫救出の為に雇われた密偵で、とこれまたキャラが濃い。

またアモンは、”吟遊詩人にして剣客”というこれまた情報量の多いエナクという人物に鍛えられたという設定なのだが、序盤だけの登場で勿体ない。
と思っているとアモンの再三の危機を陰ながら助ける謎の人物が登場し、実はエナクの友人(いや弟子なのかも)でした、とわかるというオチもつく。
出番はほぼモブキャラ並みなんだけれど。

お姫様も色々と秘密があり、アモンとは一目会った時から恋に落ちるという属性の多さ。
ヴァルヒスは仮面を被ったキャラで、その配下に剣士と魔法使いがいてこれまた濃いのだが、お姫様に味方する魔法使いもいて、そいつは黄金の鎧に身を包んだ騎士を操り…と、何本かのお話に分けた方が良いんじゃないの?と思うくらいだ。

とにかく75分というランニングタイムにかなりの情報を詰め込みすぎ。
そして強いんだか弱いんだかよくわからないし、実のところ『アモン・サーガ』と言いつつもアモンの影は薄い。
ラストでお姫様を捨てて旅立ってしまうのが、サーガの主人公っぽいと言えば言えるのかも。

夢枕+天野なので設定も凝っていて、巨大な亀の背中に築かれたヴァルヒスの移動都市というビジュアルはなかなか面白いとは思うのだが、物語の中では活かされてはいないのが勿体ないし、そしてこれはある意味では当然と言えば当然のことなのかもしれないが、肝心の天野喜孝タッチをアニメでは表現しきれていない。

アニメだからと割り切り、荒木伸吾と姫野美智にアニメ用のキャラクターデザインを担当させ、特に荒木伸吾には原画のみならず”作画監修”としても参加させ(”作画監督”ではないのはスケジュールの都合だろうか)、天野デザインを別の意味で昇華させようという意気込みは買うのだが、総じて作画のレベルにバラつきがあって、結果として荒木タッチらしさも表現しきれていないのは残念だ。

30年以上前に見た時のメモを見ると
「少々世界観がわかりにくいのはいただけないが、絵も奇麗だし元は取れるという感じ」
と書いているのだが、どうも過大評価をしてしまったような気がしてならない。

ちなみにキャストは堀内賢雄、鷹森淑乃、小林清志、森功至、麦人、永井一郎、若本規夫、大木民夫、嶋俊介、銀河万丈、戸谷公次、龍田直樹、宮内幸平、千葉順二、大久保正信とかなり豪華。
そして音楽は三枝成章が担当しているので金がかかっているのはわかるのだが。

【ひとこと】
これ一作だけで終わっちゃうなんて、「サーガ」と呼ぶのも烏滸がましい。
by odin2099 | 2021-05-15 23:24 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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