『吸血鬼ハンターD』(1985)
2021年 05月 22日
辺境の村に弟と二人暮らしの少女ドリスは、辺りを支配するリィ伯爵に血を吸われてしまった。
このままでは彼女も忌まわしき吸血鬼の仲間となってしまう。
そこで”D”と呼ばれる凄腕の「吸血鬼ハンター」を雇うことにするが、ドリスを自らの花嫁にしようと画策する伯爵、誇り高き一族に穢れた血を入れることを望まない伯爵の娘ラミーカ、不老不死である吸血鬼に憧れるミュータントの麗、それにドリスに横恋慕している村長の息子らのドラマが複雑に絡み合う。

原作の『吸血鬼ハンターD』のイラストを手掛けているのは天野喜孝。
このテイストをアニメーションで再現するのは当時としては大変難度が高く、あくまでも天野タッチを踏まえた上でアニメ用にリデザインするか、さもなければスッパリと諦めて別物にするかの事実上二択しかなかっただろう。
先日見直した『アモン・サーガ』では、当代随一の美形キャラを描く荒木伸吾が天野キャラを咀嚼した上でアニメ用のデザインを起こしていたが、一方こちらではあくまでも天野キャラは原案程度に留め、監督を務めた芦田豊雄率いるスタジオ・ライブの色が濃い、殆ど別物と呼んで差し支えないデザイン(『銀河漂流バイファム』や『超力ロボ ガラット』を彷彿とさせるもの)を採用とアプローチが分かれたのは興味深い。
そのためにファンからの(原作者からも?)評判はあまり芳しくなかったようだが、Dの出生の謎を含めて各キャラクターは立っており、二転三転する意外性もあって最後まで引き付けられた。
予備知識なしで見たので、Dの左手がどういう関係なのかとか、「ダンピール」とは何のことなのかとか戸惑った部分もあったが、未来が舞台ではあるものの”ホラー風の西部劇世界”は十分に楽しめた。
しかしこの頃のOVAなどの性といえばその通りなのだが、やや過剰ともいえるスプラッター描写(時に行き過ぎて笑いを禁じえなくなることも)や取ってつけたような女性のヌードシーンが、今日の目では少々気になる。