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『地獄門』(1953)

『地獄門』(1953)_e0033570_22523733.jpg平清盛の留守中に起きた平治の乱で、上西門院の身代わりとなった袈裟を守って敵の目を欺き、更には厳島のいる清盛の元へ事の次第を伝える役目を担った遠藤盛遠。
清盛は見事に京を取り戻し、乱の平定後に行われた論功行賞に際して盛遠は、その美しさに心奪われた袈裟との祝言を願い出る。だが袈裟は御所の侍である渡辺渡の妻だった。
諦めきれない盛遠は袈裟に直接自分の想いをぶつけたり、競べ馬で渡に挑んだり、祝宴の席では場所柄を弁えずに渡に真剣勝負を挑むなど常軌を逸した行動を取るようになる。
そして遂には自分だけでなく身内の命も危ないと悟った袈裟は、盛遠と添い遂げる代わりに夫である渡殺しを願い出るのだった。

菊池寛の戯曲「袈裟の良人」を原作に、衣笠貞之助が脚色して監督した大映初の総天然色映画で、出演は長谷川一夫、京マチ子、山形勲、黒川弥太郎、香川良介、千田是也、田崎潤ら。

京マチ子はちっとも美人に見えないし、長谷川一夫は脂ぎった小太りの中年男にしか見えない。
せめて若妻に懸想した若侍の話ならともかく、激情に駆られた痛い中年男の話では共感のしようがない。
また人妻のよろめきモノなのかと思いきや袈裟は貞淑で、受けた恩義は恩義としても盛遠を徹底的に拒絶している。
ところが盛遠の方は、全て自分の思い通りになるものだと考えてるいわば狂信的な男なので、二人は最後まで平行線だ。

袈裟の夫の渡は温厚な常識人。
それ故に世の中には常軌を逸した行動を取る者がいることには考えが及ばず、結果的に袈裟を守っているつもりで失ってしまう。
だがそれでも復讐には走らず己が信念を貫く。
救いのない話だ。


by odin2099 | 2021-06-03 22:53 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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