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『「宇宙戦艦ヤマト」という時代/西暦2202年の選択』(2021)

「宇宙戦艦ヤマト2199」「宇宙戦艦ヤマト2202/愛の戦士たち」のドラマを2時間で一気に見せる総集編映画。
「2199」の時にも総集編が作られていたので、続編の製作も決定したことで「2202」の総集編も必ず作られるだろうと思っていたが、「2199」と「2202」を一本の作品でまとめるとは予想だにしていなかった。
しかも疑似ドキュメンタリーとして。

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代/西暦2202年の選択』(2021)_e0033570_21082637.jpgアポロ11号の打ち上げに端を発した人類の宇宙進出史。沢城みゆきのナレーションにプラスして、当事者にして第三者の立場から真田志郎のコメントを挟むという形。
真田はモノローグというよりインタビューの再構成という設定なのだろう。
丁度「2202」最終回に於ける、国民投票を前にした真田の演説の拡大版とも言える内容だ。

あくまでドキュメンタリーという体裁なので、ドラマはほぼ追えない。
そして語り手が真田なので、中心となるのは守と進の古代兄弟。
後半ではキーマンを絡めてデスラーについても触れられるが、それ以外のキャラクターは誰が誰やら。
雪や島、沖田、土方、スターシャといった柱となる人物と言えども例外はない。

ただこれが個々の人物に深入りしないという姿勢で作られているのならば良いのだが、真田の口を通しているだけに古代兄弟に異常に肩入れしているようにも見えバランスが悪い。
歴史的事実を淡々と点描するのか、それとも英雄物語を語るのか。

冷徹な神の視点は持ちえず、かといって全ての物語を語るには時間不足。
作り手のどっちつかずの姿勢が、作品世界の中で作られたドキュメンタリー映画という設定だけでなく、実際の「2199」及び「2202」の総集編としても破綻しているように思えるのだが。

また結果として古代進が存命であるにも関わらず、その内面を真田が推測で語るというのも不自然。
これが「2202」最終回の前、つまり高次元世界での古代の生存が確認されておらず、戦死扱いされている時期に作られたという想定の映画ならばまだ良いのだが。

アポロ11号の件から映画を始めることを製作陣は自画自賛していたが、次の大きな歴史的事件は内惑星戦争。
ここで時間が現実世界から架空の未来世界へと飛ぶので、ハッキリ言ってケネディの演説を被せたこの件は浮いてしまっている。

「ヤマト」に「ガンダム」のような歴史年表を当てはめるやり方が向いているのかどうかはわからない。
過去にそのような試みがあったり、そういった蓄積があるならまだいいが、今回急にまとめようとしても無理がある。
〇年□月△日に××に於いてどのような事件があったのか、性急にその辻褄合わせをしようとするのは頂けない。

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代/西暦2202年の選択』(2021)_e0033570_21200499.jpgその「ガンダム」にしたところで、仮に同様のドキュメンタリーを作るとしたなら(既にイベント上映などで同種の企画の映像作品はあるが)人類の宇宙移民が始まった宇宙世紀元年から語られるべきだろう。「ヤマト」ならば、例えば火星への入植辺りから語る方が妥当ではないか。

全体の分量のうち「2199」と「2202」の比率は半分半分ではなく、概ね「2199」が四分の一で残りの四分の三は「2202」に割り当てられている。
ということは明らかにこの作品は「2202」の総集編であって、リメイク版「ヤマト」を総括するものではないということだ。
元よりこの総集編に期待するものは少なかったが、その低い期待値さえも越えられなかった、それが自分の裡でのこの作品に対する評価である。

既に新作「宇宙戦艦ヤマト2205/新たなる旅立ち」は前後編で作られ、その前章は10月8日公開と発表になり、新しいビジュアルも何点か紹介されているが、暗黒星団帝国とボラー連邦が絡んでくるらしい展開といい、新登場キャラクターのデザインといい、現段階で期待出来る点は何もない。
ヤマトは何処へ向かうのだろうか。


Tracked from ふじき78の死屍累々映画.. at 2021-06-14 00:39
タイトル : 『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』『..
同日鑑賞2本をまとめて軽くレビュー。 ◆『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』新宿ピカデリー2 ▲画像は後から。 五つ星評価で【★★★思い入れ的にはガミラス編は星四つ、白色彗星編は星二つ】 2199と2202を足した総集編映画。話が長いのでピックアップをどんどんせなどうにもならんので、割愛するのは構わんが、2199と2202で性質や傾向、大雑把に毛色の違う話なので2199...... more
Commented by ふじき78 at 2021-06-14 00:37 x
ヤマトの航海は当初の順風満帆から予想できないほど難所難所の連続。でもまあ、やってくれるからには見続けるよ。
Commented by odin2099 at 2021-06-14 22:39
> ふじき78さん

もちろん「ヤマト」だから最後まで付き合うんだけど、それでも自分が望まない方向へ、方向へと舵を切ってる現状は萎える。
by odin2099 | 2021-06-13 21:20 |  映画感想<ア行> | Trackback(1) | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur
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