『「宇宙戦艦ヤマト」という時代/西暦2202年の選択』(2021)
2021年 06月 13日
「2199」の時にも総集編が作られていたので、続編の製作も決定したことで「2202」の総集編も必ず作られるだろうと思っていたが、「2199」と「2202」を一本の作品でまとめるとは予想だにしていなかった。
しかも疑似ドキュメンタリーとして。

真田はモノローグというよりインタビューの再構成という設定なのだろう。
丁度「2202」最終回に於ける、国民投票を前にした真田の演説の拡大版とも言える内容だ。
あくまでドキュメンタリーという体裁なので、ドラマはほぼ追えない。
そして語り手が真田なので、中心となるのは守と進の古代兄弟。
後半ではキーマンを絡めてデスラーについても触れられるが、それ以外のキャラクターは誰が誰やら。
雪や島、沖田、土方、スターシャといった柱となる人物と言えども例外はない。
ただこれが個々の人物に深入りしないという姿勢で作られているのならば良いのだが、真田の口を通しているだけに古代兄弟に異常に肩入れしているようにも見えバランスが悪い。
歴史的事実を淡々と点描するのか、それとも英雄物語を語るのか。
冷徹な神の視点は持ちえず、かといって全ての物語を語るには時間不足。
作り手のどっちつかずの姿勢が、作品世界の中で作られたドキュメンタリー映画という設定だけでなく、実際の「2199」及び「2202」の総集編としても破綻しているように思えるのだが。
また結果として古代進が存命であるにも関わらず、その内面を真田が推測で語るというのも不自然。
これが「2202」最終回の前、つまり高次元世界での古代の生存が確認されておらず、戦死扱いされている時期に作られたという想定の映画ならばまだ良いのだが。
アポロ11号の件から映画を始めることを製作陣は自画自賛していたが、次の大きな歴史的事件は内惑星戦争。
ここで時間が現実世界から架空の未来世界へと飛ぶので、ハッキリ言ってケネディの演説を被せたこの件は浮いてしまっている。
「ヤマト」に「ガンダム」のような歴史年表を当てはめるやり方が向いているのかどうかはわからない。
過去にそのような試みがあったり、そういった蓄積があるならまだいいが、今回急にまとめようとしても無理がある。
〇年□月△日に××に於いてどのような事件があったのか、性急にその辻褄合わせをしようとするのは頂けない。

全体の分量のうち「2199」と「2202」の比率は半分半分ではなく、概ね「2199」が四分の一で残りの四分の三は「2202」に割り当てられている。
ということは明らかにこの作品は「2202」の総集編であって、リメイク版「ヤマト」を総括するものではないということだ。
元よりこの総集編に期待するものは少なかったが、その低い期待値さえも越えられなかった、それが自分の裡でのこの作品に対する評価である。
既に新作「宇宙戦艦ヤマト2205/新たなる旅立ち」は前後編で作られ、その前章は10月8日公開と発表になり、新しいビジュアルも何点か紹介されているが、暗黒星団帝国とボラー連邦が絡んでくるらしい展開といい、新登場キャラクターのデザインといい、現段階で期待出来る点は何もない。
ヤマトは何処へ向かうのだろうか。

同日鑑賞2本をまとめて軽くレビュー。 ◆『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』新宿ピカデリー2 ▲画像は後から。 五つ星評価で【★★★思い入れ的にはガミラス編は星四つ、白色彗星編は星二つ】 2199と2202を足した総集編映画。話が長いのでピックアップをどんどんせなどうにもならんので、割愛するのは構わんが、2199と2202で性質や傾向、大雑把に毛色の違う話なので2199...... more
