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『海底大戦争』(1966)

『海底大戦争』(1966)_e0033570_22101643.jpg米軍の新型潜水艦の実験を取材中の記者が、海底で謎の人影を目撃。
軍が取り合わないので独自に調査を進めるうちに、何者かに襲われてしまう。
気が付くとそこは海底に作られた秘密の王国だった。
狂気の科学者が水中を自在に動き回れる改造人間を生み出し、世界制覇の野望を抱いていたのだ。
協力を要請された記者は何とか隙を見つけて逃げ出そうとするが失敗し、自らも改造されようとしていた。
一方行方不明になった記者を探すべく、軍も潜水艦を出動させる。

千葉真一の追悼ということで、手元にあったまだ未見の主演作をセレクト。
日米合作映画というより、ラムフィルムの下請けとして東映が制作した作品という方が正しいのかな。
あちらではテレフューチャーとして放送されたようだが、わが国では劇場公開。

主演の千葉真一を除くと出演者は外人ばかり。
ペギー・ニール、アンドリュー・ヒューズフランツ・グローバー、エリック・ニールセン、マイク・ダニーン、ビバリー・ケラー、ブラウン・ガンターと特撮ファンには馴染みの名前がチラホラ。

原案は福島正実、半魚人のデザインは成田亨(武庫透・名義)、特撮は矢島信男、音楽は菊池俊輔とジャンルファンには嬉しい名前が並んでいる。
監督は佐藤肇。

千葉ちゃん主演のアクション映画だろうと思って見ていると、千葉ちゃんは映画の大半でヒロインのペギー・ニールと一緒に囚われの身でガッカリ。
アクションらしいアクションを披露するシーンもない。
一方で主人公に対する憎まれ役として登場してきたフランツ・グルーバー扮する海軍中佐が、中盤以降はヒーローっぽい言動を取ることで実質主役になっていくのが驚きだが、その方がアメリカ受けはするのかもしれない。

そしてペギー・ニールはてっきりお色気担当なのかと期待したものの全体的に不発だし(何が?)、この手のヒロインとしては覚悟が足りず、何かというとワーワーキャーキャー喚いて自分が助かろうとするだけ。
人類の危機とか自己犠牲なんていうものは眼中になく、彼女にとっては自分と恋人だけが世界の全てなんだろう。
そういう点では彼女は、古典的なスクリーム・ヒロインの系譜に連なる存在なのかもしれない。

しかしそうなると後のヒーロー物に慣れた目にはまどろっこしく、また熱い燃え上がるような展開も望めない怠いドラマにしか映らない。
改造人間たちもただのモンスターなのか、それとも哀れな犠牲者なのかその扱いが曖昧だし、見終わった時にもうちょっと爽快感が味わえるような作品には出来なかったものかなあと思ってしまう。

外人の中でも埋没しない”濃い”千葉ちゃんの存在感は光るが、正直かなり残念な出来栄えの映画だ。



by odin2099 | 2021-08-20 22:12 |  映画感想<カ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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