『イーディ、83歳 はじめての山登り』(2017)
2021年 08月 30日

身辺整理をしている時に見つけた一枚の絵葉書。
それは生前の父と一緒に行こうと約束して果たせなかった山のものだった。
イーディは電車に飛び乗り、山へと向かう。
「いつだって手遅れなんてことはないよ」
抑圧された女性が解放される感動的なドラマ。
――と宣伝されてはいたが、このイーディ、相当頑固で偏屈な婆さんだ。
亡くなった旦那さんというのがかなり厳格な男性至上主義者だったんだろうけど、愛情はなくても夫に尽くし、娘を育てて義務を果たした、なんていったら娘さんにもソッポを向かれるのも無理ないところ。
そして突発的に山登りを決めてしまうのだが、山は初心者。
たまたま途中で知り合った親切な青年が、上手い具合に登山用具店で働いていたから装備一式を揃えてもらい、更にレッスンまで施してくれるという棚から牡丹餅状態。
まあそれでも初めは衝突してばかりだったイーディと青年も段々と打ち解けてゆくヒューマンドラマ色が濃くなり、いよいよクライマックス、さあ一緒に登山!
…となった段階でイーディはアシストを断り、青年の危惧を他所に自力での登山に拘る。
「自分の力で昇らなきゃ意味がない」なんて格好いいこと言ってるうちに案の定天候の急変に見舞われあわや、というところで青年が間に合い、最後は二人で山頂へたどり着いてエンド。
メデタシメデタシ…じゃないよね。
振り回されてばかりの青年が気の毒だ。
それにいくらイーディの気持ちを汲んだからと言ってこの青年も、初心者の婆さん一人登らせるのは山岳ガイドとしては失格だろう。
また今後の登山用具店を巡って(というよりイーディの登山を優先させたことで)、恋人とも微妙な関係になっちゃったし、イーディは自己満足に浸ってればいいけれど、この青年の物語はどうなってしまうのかが気になって仕方ない。
監督はサイモン・ハンター、出演はシーラ・ハンコック、ケビン・ガスリー、ウェンディ・モーガン、エイミー・マンソン、ポール・ブラニガン。
イーディ役のシーラ・ハンコックは撮影当時本当に83歳だったとのこと。