『闇のバイブル/聖少女の詩』(1969)
2021年 09月 20日
邦題は”ゴシック・ロリータ”物だということはストレートに伝わるものの、作品内容とは些か乖離しているような。
”闇のバイブル”に相当するものは出てこないし、ヴァレリエを単純に”聖少女”と呼んで良いものかどうか…。
DVD裏のコピーによれば
「吸血鬼、悪魔、魔女が跳梁するゴシックの迷宮世界に迷い込んだ黒髪のアリス・ヴァレリエの不思議な不思議な一週間。」
ということになるようだ。

そして彼女の周囲の人物による、少なからぬセックスシーンが盛り込まれている。
彼女は時折これらの行為を自分の意志で、あるいは半ば強制的に覗き見ることになる。
主人公のヴァレリエは13歳の少女で、祖母と一緒に暮らしている。
散策中にふと足下を見ると血の雫が。
彼女は初潮を迎えたのだ。
そこから彼女の周囲は一変する。
彼女の耳飾りを奪い、そしてそれをそっと戻す謎の少年。
ヴァレリエに嫉妬し、若さを追い求める魔女のような祖母。
怪しげな旅芸人。
死神のような父親、そして彼女の出生の秘密。
それらはヴァレリエの性への憧れと畏れが垣間見せた幻想、妄想とも解釈出来よう。
少年はヴァレリエに口づけしようとするが、どうやら彼は兄らしいということがわかり、彼女は拒絶する。
かと思えば父親に対しても近親相姦的な感情を抱いているようで、彼女の行動は大いなる矛盾をはらみ、目まぐるしく入れ替わる。
ある時は愛情深く接し、またある時は少女期特有の残酷さを持って相手を(意図せずに)苦しめる。
その結果ヴァレリエは火炙りの刑に処せられたりもするのだ。
先に、この作品中には少なからぬヌードシーンがあると書いたが、それは主人公たる少女とて例外ではない。
服を着て水に浸かる無防備なシーンだけでなく、男性女性問わずキスシーンがあり、また自ら服を脱ぎ膨らみかけた胸をはだけるシーン、そして何やら性行為を案じさせるかのようなシーンも。
ヴァレリエは13歳という設定だが、演じるヤロスラヴァ・シャレロヴァも1956年生まれということは、撮影当時は12か13歳で作中年齢と同じ。
少女の処女性、純真無垢さと残虐性、妖艶さを掬い取った、今となっては二度と実現できない奇跡の一篇と言えるかもしれない。