『城郭考古学の冒険』 千田嘉博
2021年 10月 05日
なかでも面白いなと思ったのは、聚楽第破却と関白秀次事件に対する考察。
ある時期、豊臣政権の中心は聚楽第にあった。
朝鮮出兵のために秀吉は肥前名護屋城にあり、その留守中に秀次は聚楽第を一大軍事拠点とするべく改造に着手し豊臣政権の簒奪を目論むも、秀吉の知るところとなり粛清された可能性が浮かび上がってきた、という件である。
これが事実ならば従来の秀次像とは異なる秀次の姿が浮かび上がってくるし、仮にこのクーデターが成功して政権交代がなされていたら、豊臣家は今よりも早く滅亡の道を辿っていたかもしれないが、逆に秀次が秀頼の後見人として補佐していたら、もしかすると我々が知るより永らえていたかもしれない。
城の本というと城の役割とは何かとか、城の構造上の特徴にはどんなものがあるか、石垣の積み方は、堀は、櫓は、といった観点から触れるものが殆どだが、本書には他にも色々な”発見”があり、より一層お城が魅力的に感じられるような一冊になっている。