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『秀吉は「家康政権」を遺言していた』 高橋陽介

という題名から期待していたものとはちょっと違う内容。

『秀吉は「家康政権」を遺言していた』 高橋陽介_e0033570_21342313.jpgてっきり秀吉は後事を家康に託し、豊臣から徳川への政権交代はスムーズに行われた、とかいう説を唱えているのかと思ったのだが、巷間云われているような「五大老・五奉行」制(集団合議)というものはなく、秀吉の遺志に基づいてあくまで筆頭として家康が政を司っていた、というものだった。

ただ秀吉は、自分の死後は淀君を家康の妻として秀頼を後見した後、速やかに政権を秀頼に戻すようにと遺命したのだが、家康はそれは反故にしたことになる。

また秀吉は亡くなる直前まで精神的にも健康で判断能力の衰えは見られなかったとか、家康と石田三成の間に対立は存在せずむしろ協力関係にあったとか、関ヶ原の合戦の遠因は朝鮮戦役の折の加藤清正と小西行長の不和によるものだったとか、そういう話は興味深く読ませて頂いたのだが。

本書で取り上げられているのは朝鮮出兵から関ケ原の合戦までの時期。
朝鮮での戦局がどのように移り変わり、それに対して秀吉がどのようなプランを抱いていたのか。
そして秀吉の死後は、如何にして”勝利”という体裁をとりつつ朝鮮から引き上げるかに腐心する家康をはじめとする豊臣政権中枢と、実際に戦地にあった諸大名たちの温度差が中心になっているが、書名に拘るなら関ヶ原以後の家康の行動、そして豊臣政権の中枢を担う面々の動きにも少しは触れて欲しかったところだ。

by odin2099 | 2021-10-15 21:36 | | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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