『トレマーズ』(1989)
2021年 11月 24日

電話も無線も通じず一本道は寸断され、外との連絡手段も逃げ道もない。
残された住民たちは生き延びるために立ち上がる。
低予算ではあっても決して雑な作りではない。
要は見せ方、センスの問題だ。
人口がほとんどいない、何もない荒野というのは画的には解放感があるものの、実は物凄く限定された空間で、ある種の密室状態なのだ。
助けも呼べない、外へも逃げられない、しかし広さだけはある荒野というのは、実に良く出来た映画的な舞台と言ってよい。
”陸の「ジョーズ」”とは言いえて妙だが、「ジョーズ」と違うのは結構な犠牲者が出るにも関わらず悲壮感がないこと。
流れる音楽も軽快で陽気だし、ナイトシーンが殆どなくほぼ全編が陽光の元で繰り広げられているということもあるかも知れない。
それにもう30年以上前の作品だが、今見ても古さを感じないのはハイテク機器なんかが登場せず、というより他に何にもない砂漠の話だからなのだろう。
また多少の意見の相違、仲間割れはあるものの、この手の映画に付き物の”わからず屋”や”トラブルメーカー”も存在しない。
傍観していて事態を手遅れにしたり、トンチンカンな指示を出して悪化させたりがなく、最初のうちこそ何が起こっているのかわからずにパニックを起こしかけるが、全てがどうやら怪物の仕業らしいとなると、異議を唱える者もなく、すんなり皆が納得して次にどうするかへと物語が動いていくのも良い。
主演のケヴィン・ベーコンもフレッド・ウォードも甘い二枚目タイプとは程遠いし、ヒロインのフィン・カーターもとびっきりの美女とまでいかないのが逆にリアル。
チラっとだけお色気サービスがあるのはB級ならでは。
そして重火器マニアのマイケル・グロスが儲け役で、シリーズ化されてからは皆勤賞らしい。