『電送人間』(1960)
2021年 11月 26日

終戦時に金塊を横領しようとし、それを見とがめた科学者と兵士を生き埋めにした者がいる。
認識票を送られたのは、何れもこの一件の関係者だったのだ。
もし二人が生きていて復讐を果たそうとしているのだとしたら…?
そんな折、犯人から殺害予告が届く。
物質転送機を使った犯人による連続殺人事件を、鶴田浩二、白川由美、中丸忠雄、土屋嘉男、平田昭彦、村上冬樹、河津清三郎、堺佐千夫、佐々木孝丸の出演、脚本・関沢新一、監督・福田純、そして特技監督は勿論円谷英二という布陣で描いたSF仕立てのサスペンス物。
A地点からB地点へ瞬時に移動出来るのでアリバイが成立し、厳重な警戒網を突破して犯行を可能にするというのは正に完全犯罪だと思ったのだけれども、実は送る側と受け取る側の双方に装置が必要なので事前の準備が必要だし、どこへでも好きなところへ行って帰って来られる訳ではないので案外不便そう。
「スター・トレック」みたいには行かないようだが、当時としては画期的なアイディアではあったろう。
脇には平田昭彦や土屋嘉男、田島義文、沢村いき雄、天本英世らお馴染みの顔が並ぶとはいえ、鶴田浩二の特撮モノ出演は珍しく、そのせいかどことなく場違い感というか、居心地が悪そうな感じを受けてしまう。
対照的に”電送人間”を演じた中丸忠雄はふてぶてしいほどの存在感。
無表情の不気味さも良い。
ヒロインの白川由美はチラっと下着を見せるシーンがあるが、何故か彼女は東宝特撮ではお色気シーン担当のイメージがある。
死んだ筈の二人が何故生き延びたのかや、”電送人間”がヒロインに固執する理由がハッキリしないこと、
それに犯人の特定やその犯行の方法、手段の解明に至る流れがあまりスムーズに感じられない点(脚本のせいか、演出が悪いのか)もあるものの、先ずは娯楽作として及第点。
犯人が復讐を遂げた後で自滅していくラストも悪くない。