『金星人地球を征服』(1956)
2021年 11月 28日
人類の行く末を憂い、良かれと思って金星人とコンタクトを取るアンダーソン博士にリー・ヴァン・クリーフ、彼の親友で懐疑的な科学者ネルソンにピーター・グレイヴス、金星人に洗脳され、それに気づいた夫に殺されるネルソンの妻にサリー・フレイザー、夫を案ずるあまり単身で金星人と対峙するアンダーソンの妻にビヴァリー・ガーランドを配し、製作・監督はロジャー・コーマン。

そのコミカルな出で立ちに反して、ドラマは至ってシリアス。
心ならずも金星人に協力してしまうアンダーソン(その前段階で、軍や同僚の科学者らに警告を発しているのだが相手にされない)の苦悩と葛藤や、信念と正義の為なら犠牲も厭わないネルソンの冷徹ぶりの対比は見応えがある。
以前見た時も「ストーリーはなかなかシリアスで良い」「チャチな仕上がりが笑いを誘うが、個人的には好きだ」と好意的なメモを残しているのだが、うーん、ちょっと待って。
今見るとネルソンは端からアンダーソンの言ってることを信じてないし、頭が固く他人の意見を聞かないタイプ。
目的の為なら手段を択ばない男だ。
そしてアンダーソンは夢中になると周りが見えなくなるタイプかな。
金星人の言動を疑うことなく妄信している。
地球人を洗脳し、感情を持たない半ばロボットのような存在にすると言われて、それが人類の輝かしい未来に通じると素直に信じる方がどうかしてる。
結局はこの映画、主人公二人のそれぞれの奥さんが苦労するだけの話。
アンダーソン夫人は金星人を倒しに行って返り討ちに遭うし、ネルソン夫人は金星人に操られ、そのことを知った旦那に射殺されるのだから救いがない。
最後、アンダーソンが我が身を犠牲にして金星人のボスを始末するが、この分だと第二、第三の侵略の尖兵がやって来そうだが、地球人はそれに対抗出来るんだろうか。