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『巨人の星』(1969)

『巨人の星』(1969)_e0033570_22164273.jpg巨人を追われた”幻の名三塁手”星一徹は、我が子飛雄馬に自分が叶えられなかった”巨人の星”になる夢を託し、幼い頃から特訓を課してきた。
その飛雄馬の実力に目を付けた花形満は、自分のチームのエースになるよう説得するが、不良少年のチームに入る気はないと断られ、二人は対決する羽目に。
しかし自慢の「ノックアウト打法」を打ち破られたことで飛雄馬を自らのライバルと認め、飛雄馬もまた花形を自らの夢への障壁として意識する。
やがて星雲高校へと進学した飛雄馬の前に現れたのは高校柔道界の覇者・伴宙太。
二人は初対面からぶつかり合うが、飛雄馬の実力を認めた伴は野球部へ入部、飛雄馬とバッテリーを組むことになる。
甲子園を目指す星雲高校野球部、その新監督として迎えられたのは、なんと飛雄馬の父・一徹だった。

<東宝チャンピオンまつり>で上映された『巨人の星』の劇場版第一作で、第1話から33話までを再編集したもので、魔送球を編み出したものの、川上哲治から巨人を去るように通告される場面から始まり、飛雄馬の誕生、花形との出会い、伴との黄金バッテリーの誕生、一徹の監督就任と紅白戦での「へそ作戦」、そして甲子園出場を決めるまでが1時間半程度でテンポ良くまとめられている。

年齢を経たせいか、飛雄馬より一徹の言い分の方に頷く場面が多い。
以前はある種のニヒリストで、必要以上に息子につらく当たる鬼のような父親、というようなイメージを持っていた星一徹だったが、自分の全存在を否定されたことから自暴自棄になっていたものの、我が子の誕生に生きる希望を見出し、そしてその息子の長所も欠点も知り尽くした上で、より良い方へ導こうとする愛情あふれる父親なんだなと思えるようになってきた。
そのやり方は少々行き過ぎに感じる場面もないではないが。

飛雄馬も、父親から厳しくしつけられた割に素直で従順なのはいいのだが、その一方で自信過剰で自己中心的な部分も目立ち、実際にこういう人物が自分の周りにいたらあまりお近づきにはなりたくないな、という気がする。

そして伴。
最初の登場こそ典型的なオレ様キャラで、根は悪い奴ではないことがわかるものの、感情表現が下手で周囲から誤解されやすかったが、飛雄馬と出会うことでこれまでの自分を素直に反省し、それからは他人の立場(主に飛雄馬の立場だが)でものを考えられるようになるなど大きな成長が見られ、主人公の理想的なパートナーとなっていく。

伴宙太役八奈見乗児の訃報が伝えられたので今日はこの作品を鑑賞したのだが、伴は良いキャラクターだし、今でも夢中になれる”熱い”思いが込められた作品だった。


by odin2099 | 2021-12-15 22:18 |  映画感想<カ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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