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『香川1区』(2021)

評判になった『なぜ君は総理大臣になれないのか』で一躍注目を集めた小川淳也議員に密着したドキュメンタリーの第2弾。
前作は2003年の初出馬からの17年間を追いかけていたが、今回は今年行われた衆院選に絞った構成。

『香川1区』(2021)_e0033570_23203952.jpg遂にライバル候補に圧勝するという劇的な幕切れで、ドキュメンタリー映画としては出来過ぎの感もあったが、実はそこで終わらない。
枝野幸男代表の辞任に伴い、立憲民主党の代表選に名乗りを上げたからだ。
こちらは残念ながら敗北に終わったが、ほんの1~2年前には無名に近い存在だった男が全国に名を知られるようになった訳で、ここから小川淳也の第二章が始まるようなそんな予感にワクワクさせられる。

ただ脆さも露呈している。
ジャーナリストや政治評論家を名乗りながらも政権ベッタリで批判され、与党のスポークスマンとも揶揄されることもある田﨑史郎は、何故かこの小川淳也のことは買っているらしいのだが、その行き過ぎと思える小川の行動を心配し声を掛けたところ、自分の信条を真っ向から否定されたことに激昂した小川が田﨑に食って掛かる場面も収められている。

あまりに熱い、熱すぎる。
そして青臭い。
やはり彼は政治家に向いていないのではないかと、おそらく彼の支持者であってもハラハラする場面ではなかったろうか。
しかし落着きを取り戻した後ですぐに田﨑に対して謝罪の電話を入れるあたりが、この人らしいなと思え、ある意味で微笑ましくも感じてしまう。

それに対して対立候補の平井卓也議員、失礼ながらあまりにも小さい小さい。
保守王国の三代目としてデンと構えていればいいのに、その焦躁ぶりは見苦しいほど。
選挙前はまだこの映画の為にインタビューにも応じるほどの余裕があったのだが、選挙戦の終盤に差し掛かると、案に小川に対して個人攻撃を始める。
PR映画を作るのはフェアじゃない、それがまかり通るなら全国の議員はPR映画を作るだろう、というのだ。

自称「平井卓也を応援する一般人」も撮影中の映画スタッフを妨害し、嫌がらせをする。
応援演説会からも締め出し、納得出来るだけの理由の説明もなく取材を拒否する。
平井卓也議員は、いわゆる「オリパラアプリ」の事業費削減を巡っての脅迫まがいの言動があったことを非難されたが、親分が親分なら子分も子分といったところである。

もしフェアじゃないというなら自分でも映画を作ってみたらどうだろう。
作りたいと手を挙げてくれる監督、スタッフがいるかどうかは別問題だが(「作ってもらえるのか」という話)、平井一族は地元でシェア六割を超える「四国新聞」のオーナーでありその傘下には「西日本放送」も収めているのだから、自力でやってやれないことはないだろう。
そもそも「地盤・看板・カバンなし」の小川淳也議員に対して、メディア王とも言える人物が立つことがフェアなのかどうかは意見が分かれそうだが。

ただスタッフがどんなに否定しようとも、公正中立な立場から香川1区の選挙を取り上げているのではなく、あくまで小川淳也に密着しているのだから「PR映画だ」という批判は素直に受け入れるべきかと思う。
製作サイドが小川淳也に過剰に肩入れしていると感じる場面は幾つも出てくる。

それがこの映画の危ういところなのだが、平井サイドがそこを突き、強行的な態度に出れば出るほど平井が悪役に甘んじることになることまで双方が計算していたのかどうか。
重ねて言うが、平井サイドは前作もこの映画も無視すれば良かったのだ。
それに選挙期間中にも発覚した平井議員絡みの疑惑の数々。
今回の圧勝は小川陣営の頑張りも勿論あるのだが、それ以上に平井陣営の敵失に助けられた部分が大きいように感じられるのだ。

前作は一人の男が世に出るまでの映画だった。
本作は、図らずもその男に惚れた連中が無意識に作ってしまった応援映画である。
その点でこの作品はドキュメンタリーとしては失格なのかも知れない。
しかし今の世の中に一石を投じるという強いメッセージ性は否定出来ない。
この作品が是なのか非なのか。
それは第3弾が作られた時に(あるいは作られず仕舞いに終わった時に)明らかになるだろう。


Tracked from ふじき78の死屍累々映画.. at 2022-01-20 21:57
タイトル : 『香川1区』シネ・リーブル池袋2
◆『香川1区』シネ・リーブル池袋2 ▲中川家の兄ちゃんにも似てるかも。 五つ星評価で【★★★★被選挙民に選挙を行う人の気持ちが伝わるか】 ツイッターでの最初の感想↓ 相変わらず面白い。確かにあのまんまなのだろうけど対立候補が悪の権化にしか見えない。そして悪の権化を倒しても政治構造が何ら変わらない皮肉。プロデューサーあの人なのか?同姓同名かでドキドキ 対立候補の平井卓也氏が、どう見ても...... more
Commented by ふじき78 at 2022-01-20 21:56 x
一応、公正中立に作ろうとはしていると見えるのですが、かと言ってスタッフ全員で彼を応援していない訳ではないだろうから、滲み出ちゃう物があるのはしょうがないでしょうね。
うさんくさくて見なかったけど、「れいわ一揆」とかれいわ新生党の映画も出来てましたね。維新が大阪府知事の映画を作り出したらヤバいだろうな。
Commented by odin2099 at 2022-01-21 22:13
> ふじき78さん

作り手だった人たちが、いつの間にか登場人物の一人になってしまう過程は興味深く見てました。
それだけ被写体が魅力的で感情移入したくなるということなんでしょうが、客観的視点を失った段階でドキュメンタリーとしては失格だったかもしれません。
ところが対立候補の平井議員が舞い上がったというか、徹底的に悪者然として映ってしまっているので、観客はあまり違和感を覚えなかったかも。
冷静に上手く立ち回れば問題なかったかもしれませんが、結果的にはオウンゴールでしたね。
by odin2099 | 2021-12-25 23:23 |  映画感想<カ行> | Trackback(1) | Comments(2)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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