『火の鳥/鳳凰編』(1986)
2021年 12月 27日
今回は原作の『鳳凰編』をベースにした1時間ほどの小品で、奈良時代を舞台に隻眼・隻腕の盗賊・我王と仏師・茜丸、対照的な二人の出会いから変貌、両者の対決を描いていく。
この映画を見るのは二度目だが、こんなにあっさりした作品だったかな、と遠い記憶を辿る。
速魚を殺してしまった後の我王は、原作と違い良弁僧正と出会うこともなく独力で悟りを開いたようだし、我王に傷を負わされた茜丸はそのことで逆に人間的に大きく成長を遂げた筈だが、この映画では傷も大したことはないようで、かえって慢心の度を高めてしまっているようだ。
速魚はあっさりと退場、ブチも茜丸との絡みは少なく、特に復活後は明らかに火の鳥の化身であるはずなのだが、曖昧にされている。
ラストも茜丸の死と、平穏を取り戻したかのような我王の姿で幕。
我王とブチの出会いもないまま唐突に終わりを告げてしまう。
元がしっかりとした骨格の話なので見れてしまうのだが、これだけのストーリーを短時間でまとめようとしたことに無理があり、これもいわゆる角川映画の”長いCM”の一本と言えるだろう。
気に入ったら(気になったら)本を買って読んでね、というワケだ。
余談だが、原作を読んだおかげで何となく奈良朝政争史が頭に入ったので、この話には思い入れが強い。
また石田太郎の我王、ささきいさおの茜丸の配役で作られた、NHKのラジオドラマ版も印象に残っている。
そちらの主題歌も名曲だ。