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『火の鳥/鳳凰編』(1986)

実写とアニメの合成で「黎明篇」を映画化した『火の鳥』、オリジナルストーリーのアニメ映画『火の鳥2772/愛のコスモゾーン』に続く、手塚治虫のライフワーク『火の鳥』を映画化した第3弾。
今回は原作の『鳳凰編』をベースにした1時間ほどの小品で、奈良時代を舞台に隻眼・隻腕の盗賊・我王と仏師・茜丸、対照的な二人の出会いから変貌、両者の対決を描いていく。

『火の鳥/鳳凰編』(1986)_e0033570_22133323.jpg出演は我王に堀勝之祐、茜丸に古川登志夫、速魚に麻上洋子、ブチに小山茉美、吉備真備に大塚周夫、火の鳥の声は池田昌子、そしてナレーションを城達也が担当している。
監督は、りんたろう。

この映画を見るのは二度目だが、こんなにあっさりした作品だったかな、と遠い記憶を辿る。
速魚を殺してしまった後の我王は、原作と違い良弁僧正と出会うこともなく独力で悟りを開いたようだし、我王に傷を負わされた茜丸はそのことで逆に人間的に大きく成長を遂げた筈だが、この映画では傷も大したことはないようで、かえって慢心の度を高めてしまっているようだ。

速魚はあっさりと退場、ブチも茜丸との絡みは少なく、特に復活後は明らかに火の鳥の化身であるはずなのだが、曖昧にされている。
ラストも茜丸の死と、平穏を取り戻したかのような我王の姿で幕。
我王とブチの出会いもないまま唐突に終わりを告げてしまう。

元がしっかりとした骨格の話なので見れてしまうのだが、これだけのストーリーを短時間でまとめようとしたことに無理があり、これもいわゆる角川映画の”長いCM”の一本と言えるだろう。
気に入ったら(気になったら)本を買って読んでね、というワケだ。

余談だが、原作を読んだおかげで何となく奈良朝政争史が頭に入ったので、この話には思い入れが強い。
また石田太郎の我王、ささきいさおの茜丸の配役で作られた、NHKのラジオドラマ版も印象に残っている。
そちらの主題歌も名曲だ。


by odin2099 | 2021-12-27 22:17 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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