『ワンダヴィジョン』
2022年 03月 19日
新型コロナウィルスの影響で劇場公開は軒並み後倒しされ、撮影スケジュールも大混乱。
元々フェイズ4は劇場公開作品とDisney+での配信ドラマが混在するとのアナウンスはあったのだが、結果この「ワンダビジョン」がトップバッターと相成った。

しかも白黒の画面で、登場人物たちの一挙手一投足に観客の笑いが被るという、シットコム形式のドラマが始まったので驚いた人も多かったことだろう。
ワンダはともかく、サノスによって殺されたはずのヴィジョンが何故?
表面的にはにこやかなコメディドラマが繰り広げられていくのだが、段々と違和感が顔を覗かせる。
「ワンダヴィジョン」というのがどうやら劇中劇であり、明らかに画面外に第三者の存在がいることや、ワンダにもヴィジョンにもこの街へ来る以前の明確な記憶がないらしいこと。
そもそもこの茶番劇に等しいように思えるドラマが、<MCU>の中でどういう位置づけなのか、時系列はどうなっているのか。
やがてこのドラマの世界が、ワンダによって作り出された幻の街であることが判明する。
ヴィジョンを失った喪失感がワンダの能力を覚醒させ、ヴィジョンを無から蘇らせてしまったのだ。
その際にこの街が住民ごと取り込まれ、ドラマの出演者としての役割を与えられ、ワンダ自身も意図しないままに演じさせられていたのである。
更に双子をも出産したワンダは、隣人の一人であるジェラルディンに自分も双子だったと打ち明けるのだが、彼女から帰ってきた言葉は「ウルトロンに殺されたんでしょう?」というものだったのだ。
ここでワンダの前に”現実”が付きつけられる。
ジェラルディンの正体は、<知覚兵器観察対応局(S.W.O.R.D)>の職員モニカ・ランボーだった。
かつてキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースの親友だったマリア・ランボーの娘であるモニカは、母が設立したこの政府組織に所属し、住民ごと街が失踪した事件を調査していたのである。
更にFBIのジミー・ウー捜査官や、今や天文物理学の博士となったダーシー・ルイスも登場するに至って、ようやくここでこの作品が紛れもない<MCU>の一篇であることが明らかになる。
ここから物語は二転三転。
ワンダの前に死んだ筈のピエトロ・マキシモフが現れるのだが、演じているのは「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」でのピーター役のアーロン・テイラー=ジョンソンではなく、「X-MEN」シリーズでピエトロならぬピーター・マキシモフを演じていたエヴァン・ピーターズ(吹替も同じ吉野裕行)というサプライズ!
別世界から召喚されたもう一人のクイックシルバー?!
これぞマルチバースの扉が開いたのかと思われたのだが、これは観客のミスリードを誘うフェイクだった。
またこの世界を創り出した真の黒幕とも呼べる魔女アガサ・ハークネスが正体を現し、ヴィジョンを利用しようとするS.W.O.R.Dの恐るべき計画も明らかになり、再三ワンダのエネルギーに触れたことで細胞が書き替えられたモニカが覚醒し、中盤辺りまでのシットコムとは打って変わった大掛かりなアクション・シークエンスを伴ったクライマックスを迎える。
至高の魔術師しか読み解くことができないはずの禁断の魔術書を携え、一人去ったワンダは名実ともに”スカーレット・ウィッチ”に。
新たに生み出され、ヴィジョンの記憶を受け継いだザ・ヴィジョン(白ヴィジョン)は何処に。
スクラル人によって何者かから招聘のメッセージを受け取ったモニカ。
彼女を呼んでいるのはニック・フューリーか?
そして”封印”された状態の魔女アガサ。
いずれも何らかの形での再登場が期待される、というより確定しているというべきだろうが、これだから<MCU>は止められないのだ。
【ひとこと】
「アントマン&ワスプ」では吹替のせいもあって頼りない三枚目にしか見えなかったウー捜査官だが、今回は別人のような有能ぶりを発揮。
やはり吹替キャストは大事だな。