『シン・ウルトラマン』(2022)
2022年 05月 16日
庵野&樋口コンビによる「シン~」シリーズの一本。
予告見た段階までは全く期待できないというか、少なくても自分好みの作品じゃないなと考えていたが、好き嫌いは兎も角として、情報量も多いことだしもう何度か見たいなと思わせてくれる作品には仕上がっていた。
TV『ウルトラマン』のタイトルは『ウルトラQ』のタイトルを破って現れる。
このオープニングは絶対に再現するなと思ったけど、まさか『シン・ゴジラ』のタイトルをぶち破って『シン・ウルトラマン』と出すとは思わなかった。
この作品は『シン・ゴジラ』の続編なのか。
竹野内豊が演じているのは”アノ人”にも見えるのだが、『ウルトラマン』は『ウルトラQ』の明確な続編ではなく、かといって無関係でもないという関係だったが、この作品も『シン・ゴジラ』の流れを汲むパラレルワールド的な”その後”のお話ということかもしれない。

「霞が関の愚連隊へようこそ」なんて軽口を叩いてるが、現場でこんな連中が我が物顔で仕切りだしたら、周囲の自衛隊員たちも良い気持ちはしないだろう。
そして寄せ集めの選抜メンバーたちも、”愚連隊”呼びに相応しいはみ出し者ばかり。
”骨太”の集団だった巨災対とは大違いだ。
その中で一際胡散臭いのが神永新二。
演じている斎藤工の”宇宙人演技”は見事だが、実はウルトラマンに憑依される前から”宇宙人”っぽい。
子供を庇って命を落とし、ウルトラマンと一体化する。
そりゃハヤタじゃなくて郷秀樹だ。
その神永が端から胡散臭いので、ヒロイン浅見弘子は浮きまくる。
バディバディ連呼しているのだが、二人揃って単独行動ばかりなので最後までバディらしさが見られなかったのはマイナス。
それがないと最後の落としどころが効いてこない。
長澤まさみは良かったんだけどね。
石原さとみに長澤まさみとくれば、次回作のヒロインは綾瀬はるかか深田恭子かって感じだが、『シン・仮面ライダー』は浜辺美波。
女の趣味が変わったか。
その長澤まさみを巡ってはセクハラ騒動が持ち上がる。
お尻を叩く(自分で)のが気合を入れる時の癖で、メフィラスに拉致された際には催眠状態で巨大化させられ、あわやパンチラ寸前。
また彼女が囚われていた場所を特定するため、斎藤工は長澤まさみの匂いをクンクン嗅ぎまわるのだが…
このご時世、もし仮に長澤まさみに訴えられたら言い逃れは出来ないだろうな。
その長澤まさみを拉致監禁するメフィラスの人間態を演じたのは山本耕史。
温厚で礼儀正しく理路整然と正論を語る紳士ながら、その実全く信用ならぬメフィラスの存在感はお見事。
メイクや服装、小道具などには一切頼っていない。
続編があるなら、是非ともまた斎藤工と山本耕史の宇宙人演技バトルを見てみたいもんだ。
あ、”宇宙人”ではなく”外星人”か。
そのウルトラマン、予告編と違って初登場の際のマスクはいわゆるAタイプ。
やるんじゃないかなと思ってたら案の定。
ただCGで飛び人形を再現したり、当時のアナログ特撮を敢えて今のテクニックで再現する拘りは正直わからん。
「ただやってみたかったんだよねー」ってことなのか。
「やってみたかったんだよねー」の際たるものはカラータイマーを取っ払ったことだろうけど、今となってはカラータイマーのないウルトラマンはどこか画竜点睛を欠いてるような気がしないでもない。
ただ成田亨デザインに固執するなら、なんで怪獣、ぢゃない”禍威獣”はかけ離れたデザインにしたのやら。
最後に出てくるゼットンのデザインにはホントにガッカリした。
そのゼットンを操る”謎の宇宙人”はなんとゾーフィ。
『ウルトラマン』最終回に出てくる宇宙恐竜ゼットンを操る”俗称”ゼットン星人と、ゼットンに敗れたウルトラマンを光の国へ召喚するために現れた宇宙警備隊員のゾフィー。
この二人が当時の児童書の類では混同され、ゾフィー(ゾーフィ)がゼットンを操っていたという表記があったのだが、そのネタをここで利用したのだ。
この『シン・ウルトラマン』の世界では、光の星(「光の国」でも「ウルトラの星」でもなく、劇中ではそのように呼称されている)は必ずしも正義と平和を愛する友好的な宇宙人の故郷という訳ではなさそうだ。
きっと宇宙警備隊のような組織はなく、宇宙の秩序を維持するために様々な文明を監視し、時と場合によっては危険な芽を予め摘み取ることも辞さない”監視者”にして”裁定者”。
結局のところ、程度の差こそあれウルトラマンたちもザラブもメフィラスも、地球人から見れば大差ない存在なんである。
ちなみに今回、ウルトラマンに初めて名前が付けられた。
その名は「ルピア」。
「姫岩垂草(ヒメイワダレソウ)」の別名で、花言葉は「絆」「誠実」。
繁殖力が強く既存の生態系に悪影響を及ぼす反面、放射性物質の吸着効果や害虫予防にも役立つ存在だそうで、なるほど、本作のウルトラマンの立ち位置に相応しいかも。
この作品、実は三部作構想らしい。
当初の構想に前日譚と後日譚を加え、『シン・ウルトラマン』、『続シン・ウルトラマン』、『シン・ウルトラセブン』で三部作。
一番やりたかったのは『続シン・ウルトラマン』にあたる話で、これは庵野秀明が自らメガホンを取るつもりのようだ。
円谷プロの今後のプランニングを見ると、2024~5年と2026~7年あたりに新作映画が予定されているので、これが続編企画なのかもしれない。
ウルトラシリーズの劇場用作品としてはこれまでで一番の出足で、このまま行けば大台突破も夢ではない。
となれば念願の『帰ってきたシン・ウルトラマン』の企画にゴーサインが出る日も遠くないかも知れない。
次は来春の『シン・仮面ライダー』だが、単なるコラボではなくこちらも世界観の共有とまではいかなくても、何らかの繋がりをアピールするのかもしれない。
例えば『ウルトラQ』→『ウルトラマン』同様の事例としては、同じ石ノ森章太郎原作で東映製作の『超神ビビューン』という作品があるのだが、これも先ず前番組である『アクマイザー3』のタイトルが流れた後に『超神ビビューン』のタイトルが現れる。
同じように『シン・ウルトラマン』のタイトルに続けて『シン・仮面ライダー』と出たなら、それはそれで凄いことだ。
ところで今年の春先、『大怪獣のあとしまつ』という作品が公開された。
着想は面白かったものの、所々核心に踏み込めないもどかしさを感じたものだが、この『シン・ウルトラマン』は『大怪獣のあとしまつ』の一つのアンサーと言えないだろうか。
『大怪獣のあとしまつ』の「あとしまつ」。
【ひとりごと】
序盤の『ウルトラQ』リメイク場面だけ見たい。
『シン・ウルトラファイト』もいいけれど、こっちをテレビや配信のミニシリーズでやらんかな。
1話10分とか15分とかで。

とても面白かったんだなあ。このゆる〜い感じも好き。厳密に言うと私はウルトラマン世代ではない。ここで言う「ウルトラマン世代」とは、「ウルトラQ」を基盤として、「ウルトラマン」「ウルトラマンセブン」と続くいわゆる第一期ウルトラシリーズの世代を指す。私がウルトラマンシリーズに初めて触れたのは「帰ってきたウルトラマン」であり、これが私にとってのウルトラマンとしてコンプリートされた。むしろ、これ以外のウルトラシリーズはきちんと見たことはないとさえ言える。それは、空想特撮シリーズや怪獣物が苦手だということではな...... more