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1984年の「ウルトラマン」

1977年あたりから盛り上がり始めたブームは<第三期ウルトラシリーズ>を生み出したが、その勢いは長続きせず、81年春の「ウルトラマン80」終了と共に終わりを告げた。

待望の新作TVシリーズ「ザ・ウルトラマン」が当時のブームを反映したアニメーション作品として作られたこと、それに続く5年ぶりの実写特撮作品が、これまた人気を博していた学園モノ、教師モノの影響を受けて作られたことは、直接の原因ではないにしても遠因であったろうことは肌感覚として持っている。
「ヤマトみたい」とか「金八先生かよ」というのは、悪口ではなかったとしても誉め言葉ではなかった。

作品としての出来の良し悪しは別にしても、もし「ザ・ウルトラマン」の時点で教師モノの影響も受けていない、従来の延長線上にある実写特撮番組として作られていたとしたら、<第三期シリーズ>はもう1年か2年は長続きしたように思えてならないのが残念だった。

その1979年と似たような状況にあったのが、1984年である。
「80」終了後も児童誌展開で「アンドロメロス」が活躍し、シリーズの再放送は相変わらず日本のどこかで行われ、懐かしがるファンに加えて新たなファンをも獲得していた。
そしてそのムーブメントは、再び劇場のスクリーンでのウルトラマン復活を成し遂げたのだ。
それが春公開の「ウルトラマンZOFFY/ウルトラの戦士VS大怪獣軍団」と夏公開の「ウルトラマン物語」の2本である。
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ウルトラシリーズの劇場版が作られるとしたら、また「ウルトラマン」からセレクトした総集編になるのか、それとも今度は「ウルトラセブン」や「帰ってきたウルトラマン」になるんだろうか。
漠然とそんなことを考えていた時に発表されたのが「ウルトラマンZOFFY」。
ウルトラ兄弟の長兄ゾフィーを狂言回しに、シリーズ全て(アニメの「ザ・ウルトラマン」を除く)からピックアップしたカタログムービー、動く怪獣図鑑という発想に「なるほど、この手があったか」と唸らされたものである。

まだ家庭用ホームビデオが広く普及してはいない時代だ。
数年後、80年代の終わりから90年代の初めにかけては、こういった再編集ビデオは数多くリリースされるようになるが、一本の映画でシリーズの枠を超えた沢山の人気怪獣、宇宙人が見られるというのは、子供たちにとって魅力的な企画だったはずだ。
ゾフィー絡みでの新撮シーンがあるのも映画ならではの付加価値を高めているし、主題歌(平たく言えば「ゾフィーのテーマ」だ)も新しく作られたし、何よりも後のシリーズ展開においてターニングポイントとなったのは次の二点だと思う。

一つは「ウルトラQ」が「ウルトラマン」の前史であると規定されたこと。
これまでも「Q」と「マン」はハッキリと地続きであると明言されてはいなかったが、ファンは当然のように「Q」の延長世界に「マン」があると認識していたが、それを公式に認めた形になったのである。

そしてもう一つは「帰ってきたウルトラマン」の主人公に名前が付いたこと。
これまで作品中では「ウルトラマン」と呼ばれ、区別する際には「ウルトラマン2世」、「新ウルトラマン」、「帰ってきたウルトラマン」、「新マン」、「帰りマン」、「帰マン」など様々な呼び方をされてきたヒーローは、この作品で「ウルトラマンジャック」と命名された。

これに関しては今日に至るまで賛否両論、というより否の声の方が多いように感じるのだが、「帰ってきたウルトラマン」のリアルタイム世代でありながら、個人的にはすんなりと受け入れられた。
というより、公式がそう設定したならばそう呼ぶしかないだろうし、他方を「初代ウルトラマン」とか「古いウルトラマン」「旧ウルトラマン」と呼ぶのも抵抗があったので、区別するには便利だと感じたからだ。

熱心なファンにとっては見慣れた映像ばかりだし、その切り取り方は必ずしも原典準拠ではなかったが、新しく作られた「ウルトラマン」ということでそれなりに満足出来た。
併映が「ウルトラマンキッズ」だったのは、当時の円谷プロがそちらに力を入れていたからだろうが、これもまた「ウルトラマン」だと寛容な気持ちにもなれたものである。

続く「ウルトラマン物語」は、何といっても新作映画としての見応えがあった。
正直「ウルトラマンZOFYY」で主だった人気怪獣、宇宙人の映像は使い切ったので、同じ手は使えないな…と不安に感じていたのだが、少年タロウがウルトラ戦士として成長していくという新たな物語を組み立て、実に半分以上を新規撮影し、既存の映像と上手く組み合わせて作り上げ、これまた驚かされた。

勿論既存のシーンと新撮シーンは明らかに乖離しているし、レオや80が「ウルトラ兄弟以外」にカテゴライズされ、ともすればタロウよりも先に地球へ派遣されたようにも受け取れることや、ヒッポリト星人やグランドキングとの対決の際にその二人が不在なのが不自然に感じられることなど問題点は数々あるものの、「新しいウルトラマンの活躍シーンを劇場のスクリーンで見ることが出来た」経験には代えがたい。
こちらの方がより子供たちにはアピールしただろう、と思ったのだが、どうやら興行的にはそれほどでもなく、次回作(「アンドロメロス」を中心にしたものと伝えられている)は頓挫し、新たなTVシリーズを生み出すことも出来なかった。

「シン・ウルトラマン」も良いのだが、自分が見たいのはむしろこういったウルトラマン映画。
ただ劇場映画としての実現は難しそうだから、今後の配信ドラマに期待したい。


by odin2099 | 2022-05-26 20:45 | 映画雑記 | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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