『ナワリヌイ』(2022)
2022年 06月 19日
フィクションではなく、これがドキュメンタリーだということに驚き、かつ恐れ戦く。
妻の必死の呼びかけにようやく応える形で転院が認められ、逸早く受け入れを表明したドイツへ搬送。
ベルリンの病院で奇跡的に一命をとりとめた彼の身体からは、毒物が検出された。
回復した彼と家族はジャーナリストの協力を得て、自分の暗殺未遂犯の捜査に乗り出していくのだが、これが冒頭に掲げたように、そんじょそこらのスパイ映画なんざ目じゃないスリリングさ。
そして遂に実行犯の一人から、事件の詳細が明らかにされる。
もちろんプーチンをはじめとするロシア政府はこれを否定。
特にアレクセイ・ナワリヌイの名前はタブーとされ、会見でもあたかも”名前を呼んではいけないあの人”状態なのはむしろ滑稽ですらある。
かくも彼の国では嘘や隠蔽が常態化しているのか。
しかも根拠や理由を説明することなく、ただただ一方的に否定し隠すだけの幼稚さだ。
その後回復した彼は、支持者たちからの反対の声を押して母国へ帰還。
市民たちからは熱狂的に歓迎されながら即座に空港で収監され、現在も服役中である。
折しもロシアによるウクライナ侵攻の惨状が世界中に報じられる中で、よくもこのような内容の作品が作られ、かつ公開されたことに驚くとともに、製作陣の勇気と熱意、努力に感謝したい気分だ。
そしてこれを機に少しでもロシアが、そして世界が良い方向へ向かっていくことを願う。