『ソー/ラブ&サンダー』(2022)
2022年 07月 10日
サノスとの戦いの後、ソーはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの連中と一緒に宇宙で大冒険を繰り広げる一方、自分探しの旅も続けていた。
そんなある日、旧友シフからの救いを求めるメッセージを受け取ったソーは、ガーディアンズと別れてシフの元へ。
彼女の話によれば、ゴアという冷酷な殺人鬼が全ての神々を殺害すると宣言し、アスガルドもその標的になっているのだという。
急ぎ地球のニュー・アスガルドへ戻ったソーはヴァルキリーと合流するが、そこでもう一人意外な人物とも再会する。
それは復元されたムジョルニアを手に、ソーの能力をも得たかつての恋人ジェーンだった。

ということでナタリー・ポートマンが復帰。
それに少ない出番ながら、シフ役のジェイミー・アレクサンダーも戻ってきた。
ヘラのアスガルド襲撃やサノスの一件でも行方が知れなかった彼女だったが、今回片腕を失うことになったものの健在だったのは喜ばしい限りだ。
ガーディアンズのメンバーは序盤のみの登場で、ピーターがソーと多少絡む以外はホンのチョイ役という感じなのが残念だが、カメオだと考えれば贅沢な使い方ではある。
ここのところ『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』とキャラクター的には充実しながらも重苦しい内容が続いていた<MCU>だったが、久しぶりに肩肘張らずに愉しめる作品になっている。
――と言いたいところだが、実のところお話は結構ビターなテイスト。
ジェーンはステージ4の癌に侵され余命幾許もなく、ムジョルニアによってソーの力を得たものの、その力が逆に化学療法の効果を弱めてしまい、最後はソーの腕の中で息を引き取る。
ゴアは最愛の娘を失ったことで信仰を喪い、神殺しとなってしまったという経緯があるので、根っからの極悪人という訳ではない。
最後に全知全能の力を得たゴアは神々の皆殺しではなく娘の復活を願い、甦った娘に看取られながらその行く末をソーに託して死んでゆくといった具合で、決して明るく楽しい冒険映画ではないのだ。
『ブラック・ウィドウ』以降フェイズ4の映画は、どれも後味があまり良くない作品ばかりである。
ただこれをカラフルでポップな映像で包み、全編にギャグを散りばめているので表面的には深刻さを感じさせないものに仕上げているのだが、そのあたりが自分の感覚とはちょっと相容れない。
終盤ではゴアに囚われていたアスガルドの子供たちが、ソーの力によって半ば狂戦士化して殺戮を繰り広げるというのも、ディズニー映画ならずとも違和感を覚える。
ノープランなヒーローのノーテンキな活躍を描くのであれば、もうちょっとシリアス展開は抑えた方が良かったのではなかろうか。
例えばベタだし感動が台無しだと言われてしまえばそれまでだが、最後にジェーンの癌が完治しハッピーエンドで丸く収まるとか。
一応はポストクレジットシーンでジェーンは、ヘイムダルに迎えられヴァルハラへ辿り着いたことで再登場に含みを持たせたが、これではハッピーエンドを装っただけだ。
前作『マイティ・ソー/バトルロイヤル』も手放しでは楽しめなかったことを考えると、タイカ・ワイティティ監督と自分との相性は良くはないのかもしれない。
唯一の救いはゴアの娘(通称”ラブ”)の存在で、彼女がソーの養子になったことから次世代への橋渡しも可能になったことだろうか。
演じているインディア・ローズは実に愛らしいが、実は彼女、クリス・ヘムズワースの娘だそうで、親バカ丸出しの親娘共演シーンだと思うと一層微笑ましく感じる。
また今回かつてライバル会社のヒーローを演じた俳優がヴィランのゴアを演じ、同じくライバル会社のそれとは別のヒーローの父親を演じた俳優が神々の王ゼウスに扮しているが、このゼウス、助力を求めに来たソーを足蹴にしたことでその怒りを買い、ケチョンケチョンにされたことから次回作ではヴィラン化しそうだというのはメタ的にはなかなか面白い。