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『ロッキーVSドラゴ』(2021)

『ロッキーVSドラゴ』(2021)_e0033570_08134959.jpg『ロッキー4』の出来に不満を持っていたスタローンは、コロナ禍で時間が出来たこともあって内容を徹底的に見直し、なんと再編集版を作ってしまった。
それがこの『ロッキーVSドラゴ』なのだが、元々スタローン自身が監督してるんだから、これを<ディレクターズカット版>ではなくて何と呼べばいいのやら。

また凄いのは「未公開映像42分」を追加しながらも、上映時間が94分ということ。
オリジナル版は92分だったから、つまり半分くらい差し替えてるのだ。
よくもまあ未使用テイクがそんなにあったなあ。

お話は当然ながら同じ。
といっても細かいところは忘れちゃったので、後で『ロッキー4』のBlu-rayをチラチラ見なおしたのだが、先ず冒頭のグローブとグローブがぶつかってバーン!というショットからしてない。
前作クライマックスでのクラバーとの再戦での死闘シーンも短め。
その代わりクラバーとの初戦での敗北シーンが加えられ、アポロがトレーナーを買って出るなどロッキーとアポロの関りがより強調されている。

ドラゴと戦う前のアポロとロッキーのやり取りも変えられ、ロッキーがタオルを投げなかった(投げられなかった)心情が強調されることに。
アポロの死の描写もあっさりとしたものになっている。
その後のアポロとの葬儀でロッキーが掛ける言葉も違うし、ドラゴとの戦いを決意した後のエイドリアンとの会話内容もかなり変わっている。

いよいよロッキーとドラゴとの戦い。
ドラゴのリアクションが足されているようで、ドラゴが戦闘マシーンから人間へと変貌していく様がわかりやすくなっている気がする。

そして戦い終わって(ちなみにドラゴがKOされる件も少々違う)のロッキーの演説は短くなり、ドラゴとの間に友情とまではいかないが拳を交えた者同士の共感のようなものも描かれている。
だが『ロッキー4』ではロッキーの演説に立ち上がって拍手をした書記長は、こちらでは憮然として足早に席を立ってしまう。
『ロッキー4』では米ソの雪解けムードが感じられたが、この作品ではあたかもロシアのウクライナへの軍事侵攻を彷彿とさせるような、という見方は穿ち過ぎか。

その他細かい点を挙げるとキリがないが、幾つか列挙すると――

ロッキー邸でのやり取りが殆どカット、もしくは差し替えられ、ポリーへのプレゼントであるロボットが全く姿を見せない。
それに伴いエイドリアンもそうだが、ポリーやロッキーの息子の出番が減った。
ついでに言うとドラゴ夫人も。
また『ロッキー4』ではアポロの死後、唐突にドラゴと共に記者会見に臨むロッキーだが、タイトル返上に至る過程が追加。
更に、カラーだった回想シーンが全て白黒に置き換えられるなど枚挙に暇がない。

どちらが良いかは好みの問題もあるし、敢えて別ヴァージョンを作る意味があったのかと思わないでもないが、よりストレートに、よりエモーショナルに見られるのはこの改訂版の方かな、と思う。
しかしこれを見るとまた『クリード/炎の宿敵』が見たくなるな。

【ひとりごと】
ドラゴを主人公としたスピンオフの企画が持ち上がり、ドルフ・ラングレンが賛同の意を表明。
ところがこれ、スタローンには何の断りも入れてなかったとのことで逆鱗に触れ、ラングレンとスタローンの仲もこじれてしまったとか。
また『クリード3』にはスタローンは参加してないそうだが、はたしてロッキーの運命は?



by odin2099 | 2022-08-27 08:18 |  映画感想<ラ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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