『ロッキーVSドラゴ』(2021)
2022年 08月 27日

それがこの「ロッキーVSドラゴ」なのだが、元々スタローン自身が監督してるんだから、これを<ディレクターズカット版>ではなくて何と呼べばいいのやら。
また凄いのは「未公開映像42分」を追加しながらも、上映時間が94分ということ。
オリジナル版は92分だったから、つまり半分くらい差し替えてるのだ。
よくもまあ未使用テイクがそんなにあったなあ。
お話は当然ながら同じ。
といっても細かいところは忘れちゃったので、後で「ロッキー4」のBlu-rayをチラチラ見なおしたのだが、先ず冒頭のグローブとグローブがぶつかってバーン!というショットからしてない。
前作クライマックスでのクラバーとの再戦での死闘シーンも短め。
その代わりクラバーとの初戦での敗北シーンが加えられ、アポロがトレーナーを買って出るなどロッキーとアポロの関りがより強調されている。
ドラゴと戦う前のアポロとロッキーのやり取りも変えられ、ロッキーがタオルを投げなかった(投げられなかった)心情が強調されることに。
アポロの死の描写もあっさりとしたものになっている。
その後のアポロとの葬儀でロッキーが掛ける言葉も違うし、ドラゴとの戦いを決意した後のエイドリアンとの会話内容もかなり変わっている。
いよいよロッキーとドラゴとの戦い。
ドラゴのリアクションが足されているようで、ドラゴが戦闘マシーンから人間へと変貌していく様がわかりやすくなっている気がする。
そして戦い終わって(ちなみにドラゴがKOされる件も少々違う)のロッキーの演説は短くなり、ドラゴとの間に友情とまではいかないが拳を交えた者同士の共感のようなものも描かれている。
だが「ロッキー4」ではロッキーの演説に立ち上がって拍手をした書記長は、こちらでは憮然として足早に席を立ってしまう。
「ロッキー4」では米ソの雪解けムードが感じられたが、この作品ではあたかもロシアのウクライナへの軍事侵攻を彷彿とさせるような、という見方は穿ち過ぎか。
その他細かい点を挙げるとキリがないが、幾つか列挙すると――
ロッキー邸でのやり取りが殆どカット、もしくは差し替えられ、ポリーへのプレゼントであるロボットが全く姿を見せない。
更に、カラーだった回想シーンが全て白黒に置き換えられるなど枚挙に暇がない。
どちらが良いかは好みの問題もあるし、敢えて別ヴァージョンを作る意味があったのかと思わないでもないが、よりストレートに、よりエモーショナルに見られるのはこの改訂版の方かな、と思う。
しかしこれを見ると「クリード/炎の宿敵」が見たくなるな。
【ひとりごと】
ドラゴを主人公としたスピンオフの企画が持ち上がり、ドルフ・ラングレンが賛同の意を表明。
ところがこれ、スタローンには何の断りも入れてなかったとのことで逆鱗に触れ、ラングレンとスタローンの仲もこじれてしまったとか。