『事件』(1978)
2022年 09月 04日
数日後、目撃証人などから工員の男が逮捕されたが、彼は被害者の妹と同棲生活を送っており、彼女は被告人の子供を宿していた。
やがて裁判が始まるのだが、召喚された証人たちの口からは意外な事実が次々と浮かび上がる…。

裁判官・佐分利信を前にし、検察官・芦田伸介と弁護士・丹波哲郎との丁々発止のやりとりが繰り広げられ、そこに渡瀬恒彦、西村晃、北林谷栄、森繁久彌ら曲者揃いの証人が絡んでくるという、日本では珍しい法廷サスペンス物。
被害者の松坂慶子は綺麗なのだが商売女という設定上ケバく、対する化粧っ気のない妹役の大竹しのぶが清楚に見えるのだが、実際には姉の方が哀れさを感じさせるのに対し、妹の奥には強かさが垣間見える対照の妙。
少年が姉妹の間で揺れるのも無理ないところかと思える。
物語は、単純に一人の少年を巡っての姉妹の確執が根底にあるのかと思いきやそう事は簡単ではなく、新しい証人が出てくる度にこれまでの説明や印象が覆っていくというどんでん返しも面白いのだが、中には勘違いや明らかな偽証も含まれているので油断がならないあたりがスリリング。
最後まで被告となった少年に殺意があったのかなかったのかが曖昧なままなことや、ラストシーンでのとある人物同士の会話から、まだまだ隠された事実なり真実なりがありそうで、更なる深読みが出来るのも秀逸な点だ。
なおこの作品は松坂慶子と大竹しのぶのヌードが拝めるということでも知られているが、どちらもチラっと見えるか見えないか程度なので、過剰な期待は禁物。