人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『富士山頂』(1970)

原作は新田次郎の実録風小説「富士山頂」で、富士山測候所に、台風観測のための気象レーダーを設置するために奮闘する人たちを描いたお話。
読んだのはもう10年以上前だったので、細かいところはちっとも覚えてない。

それを村野鐵太郎監督し、製作と主演が石原裕次郎。
他に勝新太郎、山﨑努、芦田伸介、渡哲也、佐藤允、宇野重吉、東野英治郎、市原悦子、星由里子その他豪華なキャスト陣が集結。
チョイ役にも見知った顔が出てくるので、映画に対する意気込みの違いが重々伝わってくる。

『富士山頂』(1970)_e0033570_20514240.jpg2時間越えの超大作で、気象庁が大蔵省へ計画を提出して予算を獲得し、受注業者が決まるまでに凡そ四分の一を費やし、後はひたすら建築現場の作業状態を映し出す。
実際に富士山でロケ撮影を行っているだろうが、美しい風景ショットは殆どなく作業風景ばかりなので画面は実に地味だ。

富士山で作業が出来るのは雪の消えてる7~8月の2カ月で、更に気象条件を考慮するとせいぜい40日程度。
2年間で完成させる計画なので、実質的な作業日数は80日。
果たしてその短期間で完成させられるのかが残り時間を使って描かれるのだが、そのあたりのタイムサスペンスや現場の人間たちの苦悩や葛藤はそれほど前面には出てこない。

資材の搬入も車が使えず、馬と最終的には忍足による人力で行うしかないという悪条件の中、天候不順が続き作業は遅々として進まず、また過酷な環境に耐えられず作業員が逃げ出し、現場にも気象庁にもピリピリした空気が充満する一年目。

後半は二年目に突入するのだが、新型ブルドーザーの導入やヘリコプターの活用で作業条件は幾分か改善されはするものの、納期は着々と迫り更に巨大な台風が接近してくる中で苦渋の決断を迫られるという展開も、何か登場人物たちに感情移入出来ないがためにハラハラドキドキ感に乏しい。

結果的にレーダーは完成し、台風接近に際しその威力を発揮はするのだが、登場人物たちのその後を案じさせる場面を見る限りハッピーエンドとは言い切れないモヤモヤした終わり方だし、ちょっと期待外れな一篇だった。
もっとも劇場の大スクリーンで見たら、また違った感想を抱くかもしれないが。

それにしてもブラックな現場である。
今ではこんな無茶な計画は許されないだろう。
してみると今の日本では、これだけ大掛かりなプロジェクトは実現不可能だということか。

【ひとこと】
ナレーションは裕次郎のモノローグじゃなく、客観的なものにして欲しかった。


by odin2099 | 2022-09-09 21:00 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur
カレンダー