『死神遣いの事件帖/月花奇譚』(2022)
2022年 12月 06日
…と言いたいところだが、実際は映画『傀儡夜曲』、舞台『鎮魂侠曲』、舞台『幽明奇譚』に続く4番目の物語となる。
時は、将軍家光の治世。――以上、あらすじは手を抜いて公式サイトからの引用。
だが、太平であったはずの江戸の町は、“腐乱人”という名の亡者たちによって混乱に陥っていた。
墓場から蘇った“腐乱人”は生者の肉を求めて町民を襲い、噛まれた者は“腐乱人”に変貌し、正気を失う。
次々と増殖する“腐乱人”の恐怖。脅かされる人々の暮らし。
そんな中、久坂幻士郎(鈴木拡樹)と死神・十蘭(安井謙太郎)は、記憶を失った少女(清宮レイ)と出会う。
「ひとつ、お願いしたい。
私が誰なのか、探してもらえないだろうか」
そう依頼された2人は、自分の名も思い出せない少女に「ハナ」と名づけ、彼女の過去を探りはじめる。
不穏なる笛の音。忍び寄る妖術師・空真(北村諒)の影。
そして、“腐乱人”に込められた憎悪と怨念。
幻士郎と十蘭は、庄司新之助(崎山つばさ)ら鬼八一家と力を合わせ、空真の陰謀に立ち向かう。

前作の千姫に匹敵する今回のキーパーソンは、なんと天海僧正。
ところがこの人物が作劇上で今一つ上手く溶け込めず、せっかくの大物登場なのに浮きまくり。
そして少女の過去話の方もやや等閑に感じられる部分があり、もうちょっと練って欲しかったかなあと思ったり思わなかったり。
意外性と悲劇性は十分伝わってくるのだが。
まあ何はともあれ幻士郎と十蘭の掛け合いは楽しいし、鈴木拡樹のコミカルな芝居とダイナミックな剣裁きとのギャップは魅力的。