『エイリアン<劇場公開版>』
2023年 01月 07日
1977年から79年にかけて作られたこの4本の作品が、今に至るSF映画に与えた影響の大きさは誰も否定出来ないだろう。
この作品での特徴は、宇宙を舞台にしたSF映画にゴシックホラーを融合させたことと、主人公が女性であること。
そこから醸し出されるエロティシズムが、作品の底流に流れていることだろうか。
ノー・スター映画であることや、ピカピカの未来社会ではなく使い古されたメカや小道具が彩る生活感溢れる”既知”の世界であるという雰囲気は『スター・ウォーズ』に通じるものがあるし、その一方で日常生活から隔離された宇宙船内のある種の冷たさを描いている点では、この作品も『2001年宇宙の旅』の子供の一人と呼んでも良いだろう。
メタリックで硬質でありながら、なおかつ生物感も兼ね備えたエイリアンのデザインも秀逸で、こちら方面でも後続作品への影響の大きさは見て取れる。
温かみを感じさせるジョン・ウィリアムズとは違い、一種突き放したかのような冷徹さや静かなる恐怖を醸し出すジェリー・ゴールドスミスのスコアは、誰しもが口ずさめる親しみやすさはないが印象的だ。
それにしてもこの作品以降、「エイリアン」という言葉はすっかり宇宙人や異星人を指す言葉として定着してしまったが、宇宙人や異星人という言葉に含まれる”知的生命体”というニュアンスは、劇中で”完全生物”とも呼ばれているこの怪物にはまるでなく、多少の違和感を覚えてしまう。
むしろ五音階で微笑んだり、青いタイツに赤マントで空を飛んだりする方が「エイリアン」としてイメージしやすい。
よって一連の事件の発端になる、未知の惑星で警告の信号を発信し続けていた宇宙船の乗員たちの方が、「エイリアン」と呼ぶに相応しいだろう。
<過去記事>
https://odin2099.exblog.jp/3196610/
https://odin2099.exblog.jp/27380792/
https://odin2099.exblog.jp/29302381/