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『新世紀、パリ・オペラ座』(2017)

2015年1月から2016年7月にかけて撮影されたドキュメンタリー映画で、先日見た『ミルピエ/パリ・オペラ座に挑んだ男』の続編的内容である。

『新世紀、パリ・オペラ座』(2017)_e0033570_20062793.jpgとにかく何の説明もない。
今画面に映っているのは誰なのか、どういう事態が起こっているのか等々、観客に一切の説明はない。
ナレーションもなければテロップもなし。
見ている人は当然そのあたりの事情は知っているものとして、映画は進んでゆく。

新作オペラの一年にも及ぶリハーサル風景、理解されない演出と出演者から上がる不満の声、スタッフのストライキに対し政府からは人員削減要求があり、公演直前に主役は降板し、劇場が襲撃されるという同時多発テロも発生、そしてバンジャマン・ミルピエの辞任といった大騒動が次から次へと襲い掛かる。
そういった流れが頭に入っていないと、見ていてもサッパリだ。

唯一わかりやすいのは、オーディションで抜擢された若手歌手にスポットが当たるパート。
その素晴らしい歌声は素人をも魅了する。
フィクションかと思うばかりのサクセスストーリーが繰り広げられるのだが、実際その後も順調に活躍の場を広げているようだ。

対照的に、子供たちへの音楽教室では、教える側と教わる側(子供たち)の温度差が気になるし、オペラ座にとってはあまり好ましくない状況も画面には登場する。
最初は映画製作に難色を示したようだが、結局はありのままを映し出すことに同意したようだ。
その英断は尊重する。
結果、それが幾分か控え目な表現に留まったとしても、である。

それにしても、どんなに興味深い題材であっても、ドキュメンタリー映画と自分との相性の良し悪しは様々。
これは、という作品にはなかなか巡り合えない。


by odin2099 | 2023-02-03 20:08 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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