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『ベネデッタ』(2021)

『ベネデッタ』(2021)_e0033570_20244030.jpg舞台となっているのは17世紀のイタリアで、聖母マリアと話が出来るという少女ベネデッタが修道院に入るところから物語は始まる。
成人となった彼女は度々イエスの幻視を見るようになるのだが、ある日家庭内暴力から逃げてきたバルトロメアという若い女性を保護することになり、やがて二人は秘密の関係を持つようになる。
そんな中でベネデッタは聖痕を受けたことでイエスの花嫁になったと見なされ、周囲の人間たちの思惑もあって修道院長の座に就くことになる。
民衆に慕われる一方で聖痕は自作自演であるとの声や、バルトロメアとの関係を問題視する声が教皇の耳にも届き、遂に裁判が開かれることになる。

同性愛で裁判にかけられた実在の修道女に興味を抱いたポール・ヴァーホーベンが脚本(デヴィッド・バークと共同)・監督を務めた作品で、出演はヴィルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソン、オリヴィエ・ラブルダン、ルイーズ・シュヴィヨット、エルヴェ・ピエール、クロチルド・クロ、デイビッド・クラヴェル、ギレーヌ・ロンデスら。

主人公であるベネデッタがとにかく型破りなキャラクター。
幼い頃から聖母マリアと身近に接し、長じてからもイエスを幻視し直接触れ、やがて聖痕を授かるに至ったのだから信心深いのだろうが、その一方で誰もそれを証明出来ないのだから希代のペテン師であるという疑いも最後まで拭い去れない。

周囲の修道女や神父、教皇、教会関係者たちもひたすら彼女に振り回され、あるいは彼女を自分が優位に立つために利用しようとして逆に手玉に取られるという有様。
また彼女は”映し鏡”でもあり、彼女と対峙した者たちは皆”真実の自分”と向き合うことになる。
彼女自身も、自分で自分の行動を理解出来ていないのではなかろうか。
画面の内外に忍び寄る黒死病の恐怖が仄めかされていることもあり、総じて暗く重たい映画だった。

またヴァーホーベン監督作品らしく、エログロなシーンは満載。
ベネデッタの危難に際し馬に乗って現れたイエスは、剣を振り回して暴漢どもの首を刎ねるし、自死を図った人物や殺害された人物たちはその断末魔が描かれる。
バルトロメアが拷問されるシーンも(流石にその”瞬間”は映し出されないが)凄惨なものだ。

ベネデッタとバルトロメアが愛し合う場面では、最初はカーテン越しにそっと触れあうだけだったのが、仕舞には局部こそ見えないがお互いに全裸で絡み合う描写へとエスカレートし、ベネデッタが聖痕を授かる場面では、イエスが先ずベネデッタに一糸纏わぬ姿になることを求めた後で自らの腰布を取るように指示し、それから身体を重ね合わせるという段取りになっている。
ただ中には、病に侵され余命幾ばくもない老女の全裸シーンなどもあり、これは流石に悪趣味だなと感じたのだが。


by odin2099 | 2023-02-23 20:27 |  映画感想<ハ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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