『アラビアンナイト／三千年の願い』（2022）

物語論の専門家アリシアが、講演先のイスタンブールで買った美しいガラスの小瓶の蓋を開けると、中から魔人＜ジン＞が現れた。

＜ジン＞はお礼に三つの願い事を叶えようと申し出るのだが、何も思いつかないアリシアはその前に、自らの欲望のために三度瓶に閉じ込められたという＜ジン＞の物語を聞くのだった。

邦題には「アラビアンナイト」が冠されているが、一般的に知られているお話とはかなり違う。
ファンタジー要素やアドベンチャー要素も殆どなく、強いて言えば大人向けの恋愛モノとしてのファンタジー性はあると言えそう。

映画はアリシアと＜ジン＞の会話で進んでゆくが、終盤までこの二人の間に劇的な展開は訪れない。
映画の大半は＜ジン＞の語る過去の物語でアリシアもこれを追体験してゆくのだが、これは辛く悲しい物語だ。
そしてこれを聞いて行くうちにアリシアの裡で、大きな変化が現れる。

ただ映画全体の語り部はアリシアであるので、＜ジン＞が語る過去の体験も、そしてアリシア自身の選択も、全ては彼女が紡ぎ出す物語＝フィクションと捉えることも出来る。
となればこれも、紛れもないファンタジー作品だと言えるのかもしれない。

主演はティルダ・スウィントンとイドリス・エルバ、監督はジョージ・ミラー。

それにしてもティルダ・スウィントンは、やはり年齢・性別を超越した凄い役者だ。