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『エッフェル塔/創造者の愛』(2021)

エッフェル塔の建設に纏わる秘話を、設計者ギュスターヴ・エッフェルを主人公に描いた物語で、監督はマルタン・ブルブロン、出演はロマン・デュリス、エマ・マッキー、ピエール・ドゥラドンシャン、アリマンド・ブーランジェ、アレクサンドル・スタイガー、ブルーノ・ラファエリ。

『エッフェル塔/創造者の愛』(2021)_e0033570_16283430.jpg設計の段階で試行錯誤を繰り返し、いざ建設が始まると問題が山積して工事は遅々として進まず、あわや計画は中止か?というところまで追いつめられるものの、最後には見事に完成する、というタイプのドラマなのかと思って見に行ったのだが、良くも悪くも期待は裏切られた。
確かにそういう部分もあるのだが、メインとなっているのは恋愛ドラマ、しかも不倫劇だ。

当初パリ万国博のモニュメント作りを持ち掛けられたエッフェルは頑なに断り、代わりに地下鉄建設に意欲を見せていたのだが、ある時に豹変。
それは久しぶりに再会した記者である友人ピエールの、その妻の一言からだった。
その友人の妻というのが、元恋人のアドリエンヌ。
かつて結婚を誓い合ったものの、彼女の親の反対で無理矢理別れさせられた相手だったのだ。

それからエッフェルは精力的にモニュメントの建設に取り組み、その合間にアドリエンヌとの逢瀬を繰り返す。
エッフェルは妻を亡くしたばかりだが、アドリエンヌの方は初めは抵抗して見せるものの、段々と大胆な密会を繰り返すようになる。
やがてピエールの知るところとなり、再び別れが訪れるが……。

その間に建設反対運動が起こったり、現場作業員の賃上げ要求のストライキが起こったりというエピソードも盛り込まれるが、いつの間にか何となくクリアされ、最後は落成式の場面。
アドリエンヌは群衆に紛れて塔をの完成を見届けに現れ、彼女の存在に気付いたエッフェルと視線を交わしあう、というのが結末だ。

これがどこまで史実に基づく内容なのかはわからないが、まるで熱に浮かされたようなエッフェルの行動にもアドリエンヌの行動にも共感できないし、建築現場だけでももっとドラマが描けたろうにと思うと何だか勿体なく感じてしまった。
エッフェル塔歓声の裏側に人妻のよろめき劇があったと考えると、ロマンティックというより幻滅の方が勝ってしまう。


by odin2099 | 2023-03-11 16:31 |  映画感想<ア行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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