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『Single8』(2023)

1978年夏、『スター・ウォーズ』日本公開。
これに衝撃を受け、自分もあんな特撮映像を撮ってみたいと決意した主人公は、高校最後の学園祭にクラスで映画を作って参加することを提案。
クラスの憧れのマドンナをヒロイン役に口説き落とし、遂に撮影が始まる!
――という、小中和哉監督の自伝的物語。
出演は上村侑、高石あかり、福澤希空、桑山隆太、川久保拓司、北岡龍貴、佐藤友祐、有森也実ら。

『Single8』(2023)_e0033570_21334612.jpgああ、こんな風に8ミリ映画を撮りたい人生だった。
同級生が作った映画に憧れ、嫉妬し、自分でも出来るんじゃないかと勘違いしたあの夏。
友人たちと企画を立て、ストーリーを練り、スタッフとしての参加や出演交渉まで始め、台本作りまで進んだものの頓挫した思い出。

持つべきものは楽しみを分かち合える、共感出来る仲間たち。
そんな素敵な関係性に共感して見ていた。
そしてマドンナは所詮マドンナ、別世界に棲む手の届かない存在。

撮影が進むにつれ主人公との距離が縮まっていくのだが、現実はそう甘くない。
「彼女は恋多き女なんだ」と自らを納得させる台詞も出てくるが、おそらく彼女は移り気なんじゃなく、無自覚系小悪魔女子なんだろう。

別に相手に気を持たせるような素振りをしたワケではなく、本人としてはごくごく普通に振舞っているのに周囲が勝手に勘違いした、というような。
美少女の残酷性と、いわゆるヲタク(この当時はまだこんな言葉は一般的じゃなかったが)との越えられない壁も描いた青春映画の快作である。

パンフレットには犬童一心、手塚眞、金田龍、河崎実、黒沢清、本広克行、樋口真嗣、小林弘利、三留まゆみら同世代が賛辞を寄せ、今関あきよしに至ってはスタッフとしても参加。
まだまだ自分はノスタルジイに浸る年齢ではないと思っていたが、深く心に刺さった一本である。


by odin2099 | 2023-04-03 21:35 |  映画感想<サ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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