人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『ノートルダム 炎の大聖堂』(2021)

2019年4月15日に起きたノートルダム大聖堂の大惨事。
いつもと変わらない日常、そこで働く人々、そして大勢の観光客。
そこへ火災発生を知らせる警報が鳴り響くが、これは誤作動ということで片づけられてしまう。
その間に火の勢いは増していき、消防署に通報がなされた時にはもはや手の付けられない状態に陥っていた。
人命を救うだけでなく、貴重な文化財、聖遺物をも救わなければならない。
その決死の消火活動に挑んだ消防隊員たちを描いた、ジャン=ジャック・アノー監督の実話ベースの作品。

『ノートルダム 炎の大聖堂』(2021)_e0033570_21271645.jpg消防隊員や大聖堂の職員、聖職者たちの内の何人かにスポットが当てられはするが、映画全体を引っ張っていく主人公や狂言回しに類するキャラクターは登場しないし、殊更彼ら彼女らを英雄視もしていない。
無名の俳優たちが起用され、大掛かりなセットを組み、ノートルダム大聖堂だけでなくサンスの大聖堂やサン=ドニ大聖堂、ブールジュ大聖堂、アミアン大聖堂などでもロケ撮影を行い、SNSを通じて呼びかけて集めた実際の火災現場の映像も使用。
ジャンルとしてはディザスター映画の範疇に入るが、極力CGに頼らないリアリティ重視の絵作りは、これはドキュメンタリーなのかと錯覚を覚えるほどだ。

古く狭く入り組んだ構造の建物内部では、設備の老朽化もあって思うような消化活動もままならなず、結果的に消防隊員たちに死傷者は出なかったという結末を知っていても、今まさに危険に直面している隊員たちの姿にはハラハラさせられる。

また聖遺物を巡っての学芸員と消防隊員とのチグハグなやり取りや、鍵がなかなか見つからなかったり、金庫の開け方をど忘れしてしまったりといった、極限状態だから起きるパニックに右往左往する姿も、後で考えれば笑えるのだが逆に臨場感を醸し出している。
フィクションではなく、これが実話なのだと思えば尚更だ。
ちなみに映画では火事の原因については、幾つか仄めかされてはいるものの言及はされていない。
あくまで鎮火の過程を追うに留まっている。


by odin2099 | 2023-04-14 21:30 |  映画感想<ナ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


by Excalibur