『ナイツ・オブ・ザ・ゾディアック 聖闘士星矢/The Beginning』(2023)
2023年 05月 02日

監督はトメック・バギンスキー、出演は新田真剣佑、マディソン・アイズマン(『ジュマンジ』の娘かあ。わからなかった)、ショーン・ビーン(またもや死んじゃう役)、ディエゴ・ティノコ、ファムケ・ヤンセン、ニック・スタール(『ターミネーター3』でのジョン・コナー!)、マーク・ダカスコス、ケイトリン・ハトソンら。
熱血少年漫画を大真面目に映画にしました、という作り手側の真摯な態度は伝わってくる。
元は荒唐無稽なお話なのだが、それを精一杯理詰めにしましたというか、キャラクターの心情やその背景、動機なども出来るだけ丁寧に解釈、説明を試みています、というのもわかる。
神話を再構築する手間なんざ省き、神々の話はさらっと流し(神サマが実在したなんて信じられないよね?)、城戸沙織、もといシエナの出自も曖昧にし(神サマが生まれ変わる?!)、グラード財団の総帥を城戸光政改めアルマン・キドではなくその元妻ヴァンダー・グラードにして物語上の悪役に仕立て、星矢たちとの戦いを、闇に君臨する組織とその逃亡者との極めてプライベートな戦いとして描くことで、地球規模の神々の戦いなどという大風呂敷を広げることなくまとめ上げている。
しかし原作となっている漫画は整合性とか辻褄合わせには無頓着で、どちらかというと勢いで突っ走るタイプの作品。
「細けえことはいーんだよ」が持ち味の筈なのだが、出来上がった作品はなんとなく端正な、理路整然とまとまったお話になっていて、これって原作の良さをかえって殺してないか?
だから少年が修行を通じて強くなり、不思議な縁で結ばれたお姫様の危機を救ってメデタシメデタシというちょっと新手の格闘映画としてはそれなりに面白く見ていられたが、これが『聖闘士星矢』の実写映画化と言われちゃうと「う~ん」となってしまう。
ま、最初からわかっていたことだけど、せめてクライマックスバトルに「ペガサス幻想」がじゃんじゃん鳴り響いてくれたらなあ(劇中では控え目にメロディは二度ほど流れる)。
お話はとにかく”序章”という段階まで。
聖闘士は星矢の他には白銀聖闘士のマリンと、原作での一輝にあたる鳳凰星座のネロのみ。
紫龍も氷河も瞬も出てこない(当然ながら邪武も蛮も那智も檄も市も…)。
シエナを助ける黄金聖闘士もシルエットだけで名前は明かされない。
ネロも本作では単なる悪役(事実上のラスボス)で、今後星矢と共闘するようには見えないが……続編があればいいな。
原作の辰巳徳丸にあたるアルマンの執事マイロックを演じているのはマーク・ダカスコスで、格闘技や銃火器の扱いにも習熟した設定になったのも、アクション映画としてのリアリティ重視の表れだろう。
その前半生は不明なれど、元は特殊部隊員か凄腕の傭兵だったのかなと思わせる劇中最強の男でもある。
こっちも続編で更なる活躍の場があればいいんだけど。
【ひとりごと】