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舞台『ホロー荘の殺人』

舞台『ホロー荘の殺人』_e0033570_20545643.jpgとある秋の週末、ロンドン郊外のホロー荘に住むアンカテル夫妻の元に集まったのは、ヘンリエッタ、エドワード、ミッチといった夫妻の親戚たちに、友人であるジョンとその妻ガーダといった親しい人々。
近所に住む著名な女優のヴァロニカの突然の来訪というハプニングはあったものの、久々に旧交を温め合った一同だったが、翌日ジョンが何者かに撃たれて殺害され、その傍らには銃を手に呆然と立ち尽くすガーダの姿があった。
警察の取り調べが始まったが、ジョンの命を奪ったのはガーダの銃から発砲された弾丸ではないことが明らかになり、事件は混沌とし始める。

アガサ・クリスティーの戯曲を小田島雄志と小田島恒志が翻訳し、演出・構成は野坂実。
出演はヘンリエッタ・アンカテル/凰稀かなめ、ガーダ・クリストゥ/紅ゆずる、エドワード・アンカテル/林翔太、ミッジ・ハーヴェイ/高柳明音、ルーシー・アンカテル令夫人/旺なつき、ヴェロニカ・クレイ/綾凰華、ガジョン/佐々木梅治、ジョン・クリストゥ医師/河相我聞、コフーン警部/細見大輔、ペニー刑事/松村優、ヘンリー・アンカテル/中尾隆聖、マダム/長沢美樹(声)で三越劇場にて観劇。
宝塚OGの名前がズラリと並んでいる。

ガーダはジョンに従順な妻だったが、ジョンはヘンリエッタと愛人関係にあり、エドワードはヘンリエッタに、ミッチはエドワードに片想い。
ルーシーはエドワードとヘンリエッタに結ばれて欲しいと思い、その為にはジョンの存在が邪魔。
またヴェロニカはかつてジョンの婚約者だったことがあり、今はジョンに復縁を迫っていた、という複雑な人間関係がポイントで、動機を持つ人物は多い上にアリバイのある人物が少ないことが余計に事態を複雑にさせている。

警察が真相を披露する前に真犯人が自分の心情を吐露してしまうため、謎解きの妙味は薄れているが、そもそも犯人が誰なのかという興味ではなく、何故その人物が行動を起こすに至ったのか(そしてどの程度”知って”いたのか)や、それに気付いたであろう周囲の人々は何故そのような反応を示したのか、という部分を”読む”作品なので、俳優陣の演技合戦を堪能すれば宜しい。

実は原作の『ホロー荘の殺人』は以前読んでいて、その映画化作品である『華麗なるアリバイ』も見ているのだが、なにせ10年以上前のことなので細部はすっかり忘れていたのだが、むしろ新鮮な気持ちで最後まで楽しめた。
ちなみに小説の『ホロー荘の殺人』には名探偵ポワロが登場するが、戯曲版やそれを元にした映画版はポワロの出番を割愛したのでまた違った雰囲気になっている。

【ひとりごと】
2階席の後ろの端の席だったので、舞台全体が見づらかったのと、所々台詞が聞こえ辛かったのが残念。



by odin2099 | 2023-05-09 20:57 | 演劇 | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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