『名探偵ポアロ／ベネチアの亡霊』（2023）

ベネチアで引退生活を送っていたポアロの元を、旧知の推理作家が訪れた。

彼女から霊能者の話を聞かされたポアロは、インチキを見破るべくハロウィーンの日に行われるという怪しげな降霊会に参加すべく、引退したオペラ歌手の屋敷へと向かう。

そこは子供の亡霊が出ると噂になっている屋敷で、彼女自身最愛の娘を亡くしていた。
やがて降霊会が終ると、件の霊能者が不可解な死を遂げる。
更に天候が悪化し、ポアロたちは屋敷の中に閉じ込められてしまうのだが…。

ケネス・ブラナー監督・主演のエルキュール・ポアロ物第３弾で、原作は『ハロウィーン・パーティ』。
出演はリッカルド・スカマルチョ、ティナ・フェイ、カミーユ・コッタン、ケリー・ライリー、ジュード・ヒル、ジェイミー・ドーナン、ミシェル・ヨー、エマ・レアード、カイル・アレン、アリ・カーンら。

予想通り原作とはまるで違う話だった。
原作とは別の人物が殺され、原作では殺される人物が生き残り、犯人も別人。
原作に登場する人物の多くが割愛され、代わりに原作にはいないオリジナルキャラクターが数名出てくる。
舞台もロンドン郊外の街からイタリアへと変更されている。

幻想的なベネチアの景色の下、スーパーナチュラル・スリラーの要素が取り入れられてホラー色が強められ、何と言ってもポアロが諸事情あって本調子とは言えず、いつもの自信満々で尊大な態度が抑え気味なので前二作とはかなり趣の違う作品に仕上がってはいるのだが、その謎解きのプロセスは些か拍子抜けだし、犯人像も違った意味で意外なものだった。

もし次回作があるのならば、今度は容疑者全員を集めた中で推理を披露し、犯人を指さして大見得を切るような作品が見たいところだが、案外最終作である『カーテン』あたりを映画化しシリーズに幕を引くのかも。