檀一雄というと女優・檀ふみの実父というくらいしか知らないし、作品も読んだことがないのだが、その代表作で自伝的小説の映画化作品で、プロデューサーの高岩淡は作者の異父弟とのこと。
監督は深作欣二、出演は緒形拳、いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子、石橋蓮司、山谷初男、宮内順子、真田広之、岡田裕介、井川比佐志、荒井注、下條アトム、蟹江敬三、下元勉ら。
後妻と5人の子供がありながらも、女優を愛人として放蕩三昧。
おまけに愛人との同棲生活を通俗小説として連載し、途中怪我で原稿を執筆できなくなった時には、妻を呼び出し口述筆記させて急場を凌いだなんてトンデモない話。
特別出演の檀ふみはこの作品で、どんな気持ちで自分の祖母(こちらも夫と子供を残し、年下の学生と駆け落ちするという役柄だ)を演じたのやら。
こんな作品を見るようになるとは思わなんだ。
確かに松坂慶子と原田美枝子が脱いでるという興味で見たのだけれど、どうしてどうしてなかなか面白かった。
ドロドロした男女の愛憎劇ってのは理解できないし関心もないから、この手のものは避けてたりしたのだけれど、この作品はテンポも良く文芸作品という重さもなく、緒形拳の好演もあり最後まで楽しめた。
そしていしだあゆみが怖いこと怖いこと。
――というのが今から30年以上前に、この作品を初めて見た時の感想。
確かに主人公はサイテーだが、不思議と憎めないというか、どこか放っておけない人物として描かれているので今見ても面白く感じるが、これは美化し過ぎなのか、それともこれぐらいチャーミングでないと、女性が寄ってこないということだろうか。
いずれにせよ、今の世の中では一発アウトになりかねない人物像ではある。
そして色褪せない魅力といえば前半の原田美枝子、後半の松坂慶子、それぞれの濡れ場。
当時の原田美枝子は20代後半、松坂慶子は30代前半だと思うが、女優の一番美しい時期が切り取られているといっても過言ではないと思う。
二人を相手にあんなことやこんなことをやってる緒形拳が、見ていて羨ましいこと羨ましいこと。
二人のヌードは、この映画を見るための必要十分条件をきっちりと満たしている。
撮影中は松坂慶子に入れ込んだ深作監督が、実際に家庭を放り出すというリアル「火宅の人」状態になってスキャンダラスな話題を提供する羽目になったらしいが、道理で映画が面白くなってる訳だ。