
今回のリバイバル・ロードショー、10作品全部を見に行くつもりは今のところなく、個人的に「見ておかなければ」という作品を上映スケジュール表と睨めっこしながら選んでいるのだが、3作品目は2代目
ジョージ・レーゼンビー主演のシリーズ6作目、『女王陛下の007』。
奇しくもこれで初代から3代目迄の個人的ベストを制覇することが出来た(といっても2代目はこの作品しかないのだが)。
これも今回が劇場初鑑賞だが実に面白い。
レーゼンビーも、モデル出身でドラマや映画での演技経験がなかったとは思えないくらい堂々としてボンドらしい。
当時の「ボンド=ショーン・コネリー」という世間のイメージの中では損をしたのだろうが、6人の中の一人と考えるならば十分に「あり」だと思う。
キャリアや年齢の差もあるのでコネリーのような凄みは期待できないが(実際コネリーよりも甘いマスクである)、スポーツ万能だという彼にはコネリーにはない身の軽さがある。
もう数年経って空手やカンフー映画のブームが起きた頃だったら、彼のマーシャルアーツは大きな武器になったろうと思うと本当に残念だ。
数年後にロジャー・ムーアが、アクションシーンで苦労しているのを実際に見ているだけに(といっても、コマ落としでカクカクした動きになっているのは気になるが)。

そしてこの作品を傑作たらしめているのは、テレサ役の
ダイアナ・リグ。
大胆な行動をとる刹那主義者で、犯罪組織のボスの一人娘という一見すると蓮っ葉な女でありながら、実は情婦と一緒に死んだ夫を持つ未亡人という、恋愛に臆病になっている”純”な女という二面性を持った役どころを見事に体現。
当初は仕組まれた感のあったものの、これならボンドが諜報部員を辞めて自らの伴侶に選ぶかも、という説得力がある。
彼女の出番のない中盤が物足りなく感じられるほどだ。
それに全編を彩る挿入歌(実質的な主題歌)「愛はすべてを超えて」("We Have All the Time in the World")の甘美なメロディ。
最初に聴いた時は単なる甘々な歌にしか思えなかったが、この歳になってようやくこの”深さ”が少しずつわかってきたような…?
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