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『ルー、パリで生まれた猫』(2023)

『ルー、パリで生まれた猫』(2023)_e0033570_18534942.jpg少女クレムが屋根裏部屋で見つけたのは、母猫と逸れた生後間もない子猫だった。
クレムは両親を説得し、ルーと名付けて一緒に暮らすことにする。
夏になり家族と別荘へ出かけたクレムだったが、初めての森に興味津々なルーは脱走してしまう。
そんなルーを保護してくれたのは隣家に住むマドレーヌとその愛犬だったが、クレムは彼女を”魔女”と呼び、苦手にしていた。
夏が終わり、クレムとルーの生活に大きな変化が訪れようとしていた。
両親が離婚し、クレムは母親に引き取られることになったのだ。
やがて父親が家を出ていき、別荘の売却も決まり、荷物を片付けることになったのだが、ルーは再び森の中へ入っていってしまう。

予告を見て「ネコ可愛い!鑑賞決定!」となったが、そんな甘っちょろい映画ではなかった。
少女の成長と子猫の成長が共に描かれていくのだが、いつまでも子供ではいられない、大人になるための試練は容赦なく襲い掛かってくる、というメッセージがじわじわと伝わってくる。

変わり者の老女マドレーヌが監督の代弁者か。
彼女のちょっとした一言が重い。
最初のうちは彼女を毛嫌いしていたクレムだったが、両親が頼りにならなくなった後では、マドレーヌが友人であり導師の立場になる。

そして最後はクレムもルーも選択し、決断を下すのだが、全て丸く収まるハッピーエンドとも、辛く悲しい別れでもない、未来へと何らかの繋がりの残る終わり方だった。
心からの笑顔で祝福出来るかどうかはともかく、後味は決して悪くない。

とはいうものの、まるでドキュメンタリーを見ているかのような猫の表情や仕草が可愛い。
ルーは4匹のキジトラが演じていたそうだがそのうち8割は同じ猫で、子猫の時からスタッフ、キャストと特別な絆を築いたらしい。
この愛らしさを堪能するためだけでも見て損はないかと。



by odin2099 | 2023-10-04 18:55 |  映画感想<ラ行> | Trackback | Comments(0)

「きのふの是はけふの非なるわが瞬間の感触を、筆に写してたれにか見せん」(森鴎外『舞姫』) HNは”Excalibur(エクスカリバー)”


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